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日照ラテ粉
日照ラテ粉
novelistID. 26877
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合鍵の管理の問題

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ドアに鍵を差し込む音がした。
続いてかちゃん、と鍵が回る音、
鍵を抜く音。

それをベッドに横たわって聞いていた。
焦がれる気持ちを抑えながら。


「おい、ジグ、
 お前、いつも扉に鍵をかけていないんだったら、
 合鍵なんて渡す意味ないんじゃないか」
部屋に入ってくるなり、あきれた様子でファズは言った。
「俺も・・・人から習慣だと聞いたから試しているだけで、
 意味は特に考えていたわけじゃない」
「・・・あのな。
 俺はてっきりお前がいつも部屋に鍵をかけているものだと思って・・・
 入るときにはいつも鍵を開けようとするんだが、
 お前は部屋にいるときもいないときでも施錠してないから・・・
 必ず俺は二回、鍵を回してから扉を開けてるんだぞ」
「面倒だな」
「面倒というか・・・
 まあ、もうジグは鍵をかけないっていうのはじゅうぶん分かったから、
 この合鍵ももう、使いはしないかな」
そういいながらファズは銀色の小さな鍵を、手の中でもてあそんでいた。
「・・・もう使わないか」
「ああ」
ファズはベッドに腰掛けて、ジグの顔を覗き込んできた。
「でも、それはファズに持っていて欲しい」
「そうか」
ファズの顔が近づき、唇が近づき、重なる。
ファズの両手で顔を包まれて、引き寄せられるようにして更に深く口付けられる。
うっとりと目を閉じて、焦がれ続けた感触に酔う。
部屋まで来て欲しい、とファズを声を掛けたときから・・・いや本当はもっと、ずっと前からこれを待っていた。


「なんだ・・・今日はずいぶん、」
唇を離してささやかれるファズの言葉をさえぎるように、
腕をつかんで、ベッドの中央まで引き寄せる。
「久しぶりだからな」
「そう・・・だったか?
 最後に・・・その・・・抱き合ったのは、
 いつだったかな」
「忘れた」
というか、思い出そうともしていない。
今こうして目の前にファズがいてくれるのに、過ぎた事を考えるなんてできないと思う。


横たわる身体に馬乗りになり、
ファズはジグの服を脱がしにかかる。
ジグはただじっと瞳を閉じて、
素肌を滑っていく手の感触、あたたかさをかみしめていた。

「・・・・?」
かすかに金属の音が聞こえたような気がする。
目を開き、体を緊張させたジグに、ファズがどうした、と声をかけた。
「ドアの方から・・・音が・・・」
「気のせいだろ?俺は鍵をちゃんと閉めたぞ」
「そうか・・・」
「確かめてくるか?」
「いや、いい・・・ それよりも、
 早く・・・」
熱っぽく潤んだ赤い瞳にじっと見返され、
たまらなくなってジグの体を抱きしめ、くちづける。
その時、



「・・・!
 ・・・誰かいる」
「えっ」
気配を感じて起き上がったジグと、
ジグの言葉に振り返ったファズは、
衝立の向こうに人影を、確かに見た。
影は素早く入り口の方へ動き、
ぱたぱたと足音を立てて、そのまま逃げるように部屋から出て行った。
作品名:合鍵の管理の問題 作家名:日照ラテ粉