二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

Are you Happy?

INDEX|1ページ/2ページ|

次のページ
 



<Are you Happy?>



 街中がクリスマスムード一色になり始めるこの時期。
 冷え込みが一段と厳しくなってきたこともあり、厚手のコートを着てさらにマフラーで口元をすっぽり覆って完全防寒対策したロマーノは大変不機嫌そうな顔をして歩いていた。その隣ではあまり寒さが気にならないのか、比較的軽装備のアメリカが陽気な鼻歌を唄いながら歩いている。
「……なんでお前と買い物に行かなきゃなんねえんだ、ちくしょうめ」
「うん?なにかいったかい?あ、あそこの店に寄ろう!」
「……」
 賑わうアーケード街で大きな声を出すアメリカに、通りを歩く人々の視線が突き刺さる。
 二人は現在、日本でクリスマスプレゼントを物色していた。
 アメリカもロマーノも容姿が整っているため基本的に人目を引くものがあることに加え、アメリカが大声を上げるせいで常に注目の的になっている。
 うんざりとした顔になったロマーノがDDD!と妙な笑い声を上げるアメリカの脇腹に肘鉄を入れてうるせえと一喝入れる。だがそんなことをしてもこの大国の化身が素直に大人しくなることはなかった。それは国際会議に参加している者であれば誰でも知っていることだ。例に漏れず、ロマーノもそれを熟知している。直接的に関わることは少ないものの、リーダーシップを取ろうといつも無茶な発案をしているアメリカの姿は飽きるほど見ているのだ。それがどうして、今まで関わりのなかったアメリカと肩を並べて日本の街でプレゼント探しをしなければならなくなったのか。
「どうしたんだい、ロマーノ!そんなイギリスみたいな顔してたらハッピーが逃げちゃうぞ!」
「誰のせいだと思ってんだ」
「誰のせいなんだい?」
「……もういい。さっさと物買って帰る」
「あ、なんだい俺のこと置いていくなんて許さないんだぞっ!」
 アメリカの示した店へさっさと向かうロマーノにアメリカの抗議が入るが、それをすっぱり無視して店へ踏み込む。
 こじんまりとした小さな店だが、ところ狭しと並べられた雑貨の多さに少しだけ圧倒される。僅かに遅れて入ってきたアメリカも、店内の雑貨の多さに驚いたのか目をぱちくりさせせる。客はロマーノたち以外はいないのか、店内はやけにひっそりとしている。店内の雰囲気を出すようなBGMもなければ、レジに店員の姿もない。変な店だと思いつつも、雑貨に興味を惹かれるロマーノは奥へと足を進めた。
「いらっしゃいませ、お若いの。探し物は見つかったかな?」
「うおっ」
「Nooo!!!なんだい、驚かせないでくれよ!」
 唐突に、レジの影からぬうっと現れた老人に思わず驚いてロマーノが悲鳴を上げれば怖いものが苦手なアメリカがつられて絶叫を上げる。ロマーノは自身の背に隠れようとするアメリカを足蹴にしながら、老人へ声をかけた。
「アンタが店主か?」
「あぁ、そうだよ。ここは探し物が見つかる店だ」
ゆっくりしていくと良い。老人は静かな声音でそういうとカウンターの裏にあった椅子へ腰掛けた。腰が曲がり、背の低い老人は椅子に座るとカウンター越しでは姿が見えない。だから誰もいないように思えたのかとロマーノは納得しつつ、老人が口にした台詞に首を傾げた。
「探し物が見つかる……?」



 ロマーノとアメリカが雑貨屋に踏み入るその数十分ほど前。
 日本の家では僅かに険悪なムードが漂っていた。
「あーあああーなんや今日は厄日なん?あり得んわー」
「うるせえな、少し黙っていられないのかてめえは」
「えー目の前から眉毛が今すぐにでも消えれば黙れる気がするで?」
「あぁ、そうか。それならいっそてめえが俺の前から消えれば良いだろ」
「できるものならとうの昔にやってますー」
「……あの、おふたりとも」
「あ?」
「うん?」
 殺伐とした空気の中、やんわりと控え目に入る第三の声に二者の温度差の激しい反応。紳士の仮面が剥がれてますよイギリスさん!と胸中でツッコミながら、自宅へ訪れてきたこの二国の接待に鎖国したい気持ちが湧き上がりつつある日本がにこりと仮初の笑顔を顔面に貼りつけていう。
「どうか穏便にお願いします。顔を合わせては喧嘩ばかりなんて、哀しいですよ」
「そういってもなあ……やって、眉毛やで?」
「黙れトマト野郎」
「……」
 太陽の国とうたわれる国の化身がほら、といわんばかりに日本を見る。それに対し、日本は乾いた笑みを浮かべることしか出来ない。
「俺は別に譲歩してもええけど、イギリスが拒否すんねんで?」
「イギリスさん……」
「なっ、お、俺が悪いのかよっ」
 スペインの視線とどこか物言いたげな日本の視線に晒されてイギリスがたじろぐ。スペインは半眼でイギリスをじとりと見ながら出されていた湯呑みを手にしてお茶を啜る。
「そもそもなんで日本の家にイギリスがおんねん」
「そのままそっくり返してやるよスペイン」
「俺はロマーノが日本に用事があるー、いうから一緒に来たんやで」
「……」
「イギリスは?」
「……」
「なんや、理由ないんか」
 ことり、と湯呑みを置いたスペインがふふんと鼻で笑う。イギリスはぐっと俯いてなにかを堪えるように唇を噛み締めている。そんな二人の様子を先程から見ている日本は黙って自分の湯呑みで掌を温めるように包みこんで持ったまま事の成り行きに展開を任せていた。ひたすら、鎖国したいと内心で繰り返しながら。
「とりあえず、こちらにいらっしゃるなら前以て連絡をくだされば私は構いませんので」
連絡だけはください、連絡だけは。念押しするように繰り返す日本へ、イギリスがすまない、と小さく詫びを入れ、スペインもすんまへんと頭を下げた。このふたりは日本の家へアポを取らずに来たのだ。彼ら以外にもアポをとらずに押しかけてくる者は沢山いるので慣れていない訳ではないが、こちらとしても準備や予定というものがあるわけであって。その辺りを配慮して欲しいと常々思う。
 それにしても、と日本はちらりとイギリスへ気付かれない程度に視線を向けた。普段ならばアポを取ってから来るイギリスが何やら慌ただしく来たのは珍しい。が、日本へ来た理由は大方検討はついている。彼がくる数時間前にやはり同じようにしてアポ無しで訪れてきた二国。これまた珍しい組み合わせだったが、このふたりが来たとなると、無自覚に過保護な二国がやってくるだろうとは予想していたのだ。
 日本の家に古くからある置き時計が秒針を刻む音と、茶を啜る音が響く。外は木枯らしが吹き荒れ、夏場は常に開いている縁側に続く障子はしっかりと閉められている。陽の沈む時間がはやくなっていることもあり、午後三時を回ったこの時間帯で既に外は夕焼けに染まっている。
 そろそろ頃合いだろうか、と日本は徐に口を開いた。
「そうだ、おふたりとも……」
「あい?」
「どうした、日本」
「アメリカさんとロマーノ君のお迎えに向かわれてはいかがですか?」
あのお二人なら近くの商店街に行ってますよ。一刻、静かになった室内で日本は笑顔で爆弾を投下した。



 日本宅から暗にさっさと出て行けと追い出された親馬鹿二人が不承不承ながら揃って商店街へ向かい始めた頃、雑貨屋にいたロマーノとアメリカは首を傾げていた。
作品名:Are you Happy? 作家名:アキ