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「探し物が見つかるってどういうことだい、おじいさん」
 ひょっこりとロマーノの肩越しに顔を覗かせたアメリカが先のロマーノと同じ様に疑問を老人へ投げかけた。老人は椅子に腰掛けたまま、青年ふたりを見上げてうっすらと笑った。
「言葉の通りだよ。遠い国から来たお前さんたちは知らないかもしれんが、日本には言霊というものがあるんだ」
「コトダマ……?それが捜し物とどう関係があるんだよ」
「口に出せば、現実になるということさ」
「OH!それは本当なのかい?信じられないなあ」
「信じる、信じないも自由だ。ただ、信じる心があれば、そこに力は宿る」
さて、買うものが決まったら声をかけてくれ。それまで寝ているよ。老人はいうと、目を閉じてしまった。
 ロマーノとアメリカは暫し老人の言葉の意味を計りかねて動かなかったが、先にアメリカが行動に出た。
「俺はおじいさんのいうことを信じることにするんだぞ!———俺は、」
「プランター」
「て、君が先にいうのかい?!」
「別に先だろうが後だろうが関係ないだろ」
「Buuu!つまらないんだぞっ」
「いってろ」
 地団駄を踏むアメリカを他所に、ロマーノはレジを離れて店内を見回した。雑多に並べられた品の中から目的のものを見つけるのは骨が折れそうだと思いながら、しかし自分はプランターという比較的大きなものを探しているからそれ程苦にはならないだろうと足元を中心に見ていた。棚の下にも置ききれない雑貨が置いてある。置物、傘立て、小さな椅子。本当になんでもあるんだなと感心しかけていた時、アメリカの素っ頓狂な声が響いてきた。
「OHHH!ロマーノこれ!見てご覧よ!」
「……なんだよ」
「ほらっ、これさ!」
 呼ばれてアメリカの元に行けば、彼はぱっと手にしていた物をロマーノの眼前へ突き出した。
「プランター……」
「すごいなあ!コトダマってやつは本当なんだね!」
「……」
「よしじゃあ、俺も探すぞー!えーっとえっと、万年筆まんねんひつ……」
 プランターを押し付けられたロマーノはそれを手にしたまま老人をちらり、と見た。老人はいつの間に目を開いていたのかロマーノの視線をしっかり受け止めて笑っていた。口元が、ほらな、と声を出さずに動く。ロマーノは眉をしかめてプランターに目を落とした。片腕分程のサイズのプランターは、まさにロマーノが求めていたサイズだった。なんとなく悔しいが、欲しかったものは手に入ったので良しとするか。会計を済ますべく、レジに足を向けた途端、背後からがしりと腕を掴まれた。踏み出しを遮られたロマーノは眦を釣り上げて口を開き、
「てめーこのやろう!いいかげ———」
「見てくれよ、これ……」
「……」
「……万年筆」
「あったのかよ」
「うん」
「……」
「……」
どこか呆然としたアメリカの右手には確かに万年筆が握られていた。いっそ空恐ろしくなってきた二人に、老人は椅子から立ち上がり告げた。
「お買い上げ、有難う御座います」



 カランカラン、とドアに吊るされたベルが音を立てて二人を店から見送る。
 ロマーノとアメリカはそれぞれ包装された保護者へのプレゼントを手に、店の前でしばらく立ち尽くしていたが、やがて意を決したようにアメリカがいった。
「コトダマはともかく、欲しい物が手に入ったんだ!結果オーライじゃないか!」
「……まあそうだな」
「って、あれ、もしかしてイギリスとスペインじゃないかい……?」
「……げ」
 アメリカが指さした方向に見慣れた金髪と茶髪の青年を発見してロマーノが呻く。
「サプライズで渡すつもりだったのに、これじゃあ失敗かな?」
「仕方ねー。ひと足早いクリスマスプレゼントってことにすれば、問題ないだろ」
「DDD!それもそうだね!」
 保護者組もロマーノとアメリカが分かったのか、競うようにして走ってこちらに向かってくる。いい歳した大人が全力疾走するんじゃねー、ぼそりと呟くロマーノに全くだよ!と同意して頷くアメリカ。
 そして顔を見合わせた二人は同時に口にした。

「Merry Christmas!」
「Buon natale.」





作品名:Are you Happy? 作家名:アキ