君と始める20日間
きゅ、きゅとシューズの摩擦音が響く。ゲームは接戦だった。アルフレッドが華麗にフックシュートを決めると、イヴァンも負けじとスリーポイントシュートを放つ。終盤まで一進一退の泥仕合を繰り広げていたが、結果は菊達の辛勝だった。イヴァン以外の相手チームがそれほど動きが良くなかったことも幸いした。汗だくでへたり込むジェームズ君を尻目に、まだまだ体力が有り余っている様子のアルフレッドに遠い目をする。時間は授業開始5分前。この分では折角手に入れた昼食タダ権も無駄になりそうだった。
「明日、デートに行かないかい?」
夕食を終えて寝るまでの時間をテレビの前でだらだら過ごしていたアリスは、その言葉にぽかんと間抜け面を晒した。
「・・・は?」
「明日は休日だろう?折角だから新しくできたデパートにでも行こうよ」
アリスは思わず難しい顔をした。アルフレッドが自分をどういう風に見ているのかがいまいちよく分からなかった。昨日の朝の件を鑑みると、そういう意味合いでとってもいいのだろうか。あの夜にあったことを必至で思い出そうとしても、空っぽな記憶は無意味な混乱を巻き起こすだけだった。自分はこの従弟とどんな関係を結んだのだろう。言葉尻からして恋人?友人?はたまたセックスフレンドか。
「どうせだしお昼も外で取ろうか」
悶々と悩むアリスに気づいているのかいないのか、アルフレッドは純粋なまでの笑みで明日の予定を組み立てていく。アリスは腑に落ちない気持ちに蓋をして「・・・そうね」と簡単に答えた。
結局事態は何の進展もないまま。坂を転がりだした車輪は止まらない。加速する勢いに見ないふりを決め込んで、アリスはただぼんやりとアルフレッドの言葉を聞いていた。