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Happy Life

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第4章 いつの間にか



翌日、ドラコはいつものようにパソコンの中にいた。
それだけでハリーは自然と笑顔になる。

(機嫌よさそうだな)
ドラコは口の端を上にあげた。
(仕事が楽しいのか?)
(楽しいわけじゃないけど、君に会えるからね)
途端にドラコはそっぽを向く。
(……僕は機械だぞ)
(でも、今日も君に会えて嬉しい)
素直にハリーは言った。

ドラコは赤くなった顔を見せたくないのか、顔を合わせようとはせず、うつむいたまま書類を読み上げ始めた。
(今日の仕事は、まずA部署からのデータ入力だ。それからB部署から回ってきた書類から見積もり案の作成だ。量はすこぶる多いぞ。途中で入力ミスをするなよ)
データーの入力表をデスクトップに広げる。
そのせいでドラコの姿は、画面から消えた。

(ドラコ?)
(なんだ?)
文字のみが表の上に打ち込まれる。
(僕は君が見えないと寂しいんだけど)
(それは無理だな。一度に二つの情報は載せられないんだ)
(じゃあ、この×の部分をクリックして表を閉じたら、君が見えるの?)
(やめたほうがいい。仕事の効率が落ちると、多分僕のこのソフトも消去されるかもしれないぞ)
(それは困る!!)
ハリーは慌てた。

(……つまり仕事を早く仕上げれば、空き時間に君とおしゃべりができるの?)
(ノルマをこなせればな)
ハリーはその答えを聞くと、一所懸命仕事にとりかかった。
別に仕事は苦ではない。そのあとにご褒美がまっているとなると、なおさらだ。

退社時間少し前ににやっとハリーは、2つのノルマを仕上げて、ドラコを呼び出した。
(ドラコって僕が仕事している間、なにをしているの?)
(お前が仕事でミスしないか、監督している)
(それだけ?ほかには?お風呂に入ったりしないの?)
ドラコは肩をすぼめた。

(なにを言っているんだ………。僕は機械だぞ。そんなことは必要ない)
(え゛えっ!普通そういう育成ゲームだと、サービスショットとかあって、もれなくシャワーシーンとか出てきたりするじゃないか!)
(いったい何の話だ、ハリー……。僕は頭が痛くなってきたぞ。男の入浴シーンなんか見て、何が嬉しいんだ?まったく!)
(だって君は育成ゲームでいったら、ヒロイン役じゃないか!それなら、ご褒美で、ばーっとこうさー)
とハリーが服を脱ぐ仕草をする。
ドラコはやれやれと頭を振った。
(つまり、こういう訳だな。君は裸がみたいと)
うんうんと素直にハリーは頷く。

その答えを聞きドラコは、ゆっくりと座っていた椅子から立ち上がった。
(―――それで、君の好みは?ブロンドか?それともエキゾチックな黒髪か?瞳の色は何色だ?紫でも、黒色でも、なんでもいいぞ。胸は大きめがいいのか?スレンダーが好みか?言えばそれに合わせてやるから)
画面の中でドラコはシャツのボタンをゆっくりと外していくと、彼の姿自体が、後ろの白い壁に同化していく。
全体の姿がぼんやりと霧の向こうに消えて、にじんでいくようだ。

(早くイメージを伝えろ!形が作れないじゃないか!)
イライラとした ドラコの声も、どこか遠い所から聞こえてくる。
(……まっ、まってくれ!どういうことなの?!今、僕がイメージを伝えたらどうなるんだ?!)
(人物設定の変更だ、決まりきったことだ。君は僕のイメージが気に入らない。だから君が気に入っているイメージに、人物を書き換えるだけだ。簡単なことだ。)
ハリーは真っ青になった。
(君が消えるの?!)
(そういうことだ)
あっさりと ドラコは答える。

(イヤだっ!絶対にイヤだ!僕は君がいいんだ。君でなきゃイヤなんだ!)
ハリーは思わず、ディスプレーを掴んだ。
そうしなければ、彼が永遠にその場所から消えてなくなりそうだったからだ。

ハリーは自分の中に眠っていた、激しい感情に眩暈がしそうだった。

自分は誰とでも、一定の距離を置いて置きたかったんじゃなかったのか?
一人でいることが、なにより心地よかったのではなかったのか?
どんなものにも縛られるのは、大嫌いだったのでは?
気楽な毎日。
退屈な日々。
それが自分が望んでいた、一番の望みだったのではなかったのか?

ハリーは今、自分の中にある二つの感情の中で、呼吸が出来ないくらいだ。
ただ彼が自分の目の前からいなくなることだけが、何よりも怖かった。
そのことを思っただけで、絶望感に体が震えた。

(……分ったから。もう機械をゆするのは止めろ)
はっきりとした ドラコの声がする。
ゆっくりと白い霧は晴れて、その中から ドラコが姿を現した。

少し怒った顔で、 ドラコはそっぽを向いたままだ。
ほほが少し上気しているが、絶対にハリーと視線を合わせようとはしない。
嬉しいとき、いつも彼はこんな表情をした。
感情表現が下手なのだ。
素直になれない性格だった。
上手に立ち回ればいいものを、そのことで誤解され、いつも彼は損ばかりしていた。

「素直じゃないから、 ドラコは ドラコなんだ。そんな君が好きで好きでしょうがない」

そう笑って ドラコを抱きしめたのは、いつだったか?
あったのか?
なかったのか?
ハリーには分らなかった。

だって、 ドラコはこの四角い箱に入っている、ただの機械じゃないか……


作品名:Happy Life 作家名:sabure