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【Secretシリーズ 1 】Secret -秘密-

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第1章 逃亡



暗闇の中、僕たちは逃げ惑っていた。
たくさんの追っ手の靴音が響いてくる。

体力もない僕は息が上がってきた。
水溜りに足を取られて、滑りそうになる。
それを前にいた彼が受け止めてくれたので、僕はずぶ濡れになることを免れた。

「ありがとう、ハリー」
笑いかけると、当然だという顔で笑みを返してくる。
僕の後ろにいるブロッドは、追っ手を撒こうと呪文を唱えていた。
僕は彼らの足手まといにならないように、必死でついていく。

彼らが危険を犯してまで、敵の陣営の人質となっていた僕を助け出してくれた。
頭の中の情報が欲しかったのか、僕の頭の中の記憶はかき回されて、今混沌としている。
長いあいだの監禁生活で、体力は弱っていた。
自白剤の副作用か、ふらふらの思考では何も考えられない。
ただ、ふたりに遅れないように付いていくのがやっとだった。

もう何日、こういう逃亡生活を続けているのだろう?
寝ても起きても、逃げることで頭がいっぱいだ。
いつになったら味方の隠れ家に戻れるのか、分からなかった。
緊張の日々に神経が擦り切れてしまいそうになる。
そのたびにハリーは「だいじょうぶだから」と何度も励ましてくれた。
無口で力強いブロッドもそれに頷いてくれた。

仲間がいるってなんて心強いんだろうと、しみじみ思う。
弱って考えることもままならない僕を、リスクを承知で助け出してくれるなんて。
「お荷物じゃないか?」と何度も聞いた。
ハリーは「そんなことはない。君は大切な僕たちの仲間じゃないか、ドラコ」と笑って肩をたたく。親しげに。

僕はひどくハリーのことが好きだった。
なぜ同性の彼のことが好きなのか、よく自分でも理解できない。
弱りきった思考の中で、ハリーだけが自分を助けてくれるような気がしてならなかった。
意味もなく無条件に、彼のことが好きだった。

彼はきっと僕を仲間の元へと連れ帰ってくれる。

根拠もなく、それが信じられた。
この感情は緊張の連続の逃亡生活からきているのか、混沌としている記憶の奥からきているのか、分からない。

―――ただ僕は、ハリーのことが好きだった。

ハリーはいつも僕の目を見て、やさしく言った。
「大丈夫だよ、ドラコ。何も心配することないから……」
魔法の言葉のようにそれはすぐ僕の心の中に入ってきて、全ての不安を消し去ってくれたんだ。