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【Secretシリーズ 1 】Secret -秘密-

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第2章 目覚めたあと



長い間、苦悶の表情でうなされていたドラコは、やっと目を開いた。
ぼんやりとした視線が中をさまよい、やがて何度か瞬きをする。
そして横を向き自分を心配そうに見ている、仲間たちの顔を見た。

「………えっと君は、誰?」
ドラコはかすれた声で尋ねる。
「忘れたの?わたしはハーマイオニーよ」
知的でふわふわの髪の毛の彼女が答えた。
「―――そうなんだ。僕は記憶が混沌として、何も思い出せないんだ」
「ええ、分かっているわ」
彼女はやさしい笑みで頷いた。

「じゃあ、僕のことは?」
彼女の隣にいる、驚くほど鮮やかな赤毛の彼が尋ねてくる。ドラコは必死で思い出そうとしてるが、やはり頭を振った。
「―――ごめん。君のことも分からない」
その言葉に赤毛の彼は嬉しそうに笑う。
「いいや、別にいいよ。無理に思い出さなくてもいいから。僕はロンだよ」
人懐っこい笑みだ。
つられてドラコも少し笑った。

ロンは周りにいる仲間を、次々と紹介していく。
「こっちにいるが、ネビル。あの赤毛の一団はみんな僕の兄弟なんだ。フレッドとジョージと妹のジニーだ。ほかにもたくさんいるんだけど―――」
途中でハーマイオニーがそれを遮った。

「今はやめておいたほうがいいわ。まだ気がついたばかりですもの。ドラコの顔を見てごらんなさい。ひどく混乱しているわよ。今はゆっくり休ませてあげましょう」
まだしゃべりたそうなロンを制してくれて、ドラコも助かったような顔になる。
目覚めたばかりの彼は、たくさんのことをまだ覚えきれないからだ。

ただドラコは、不安そうに辺りを見回している。
「僕はどうしてここにいるんだろう?」
「昨日の夜に、隠れ家へ戻ってこれたんだよ。忘れたの?」
「………そうだっけ?」
ドラコは必死で思い出そうとするが、何もその記憶がなかった。

本当に強い薬を飲まされたらしい。
頭の中の記憶が何もよみがえってこない。
あんなに会いたいと思っていた仲間と、やっと顔を合わせている今も、何も思い出せないでいた。
じわじわと不安な気持ちが自分の中に広がっていくのが分かる。

(………いったい僕はどうしたというんだ?)

「―――ブロッドはどこにいるの?」
ふいにドラコは尋ねた。
「ああ、それなら、ここに」
ロンが指をさす。
その先には樫木でできた杖がテーブルに置いてあった。
「―――えっ?ブロットって杖だっけ?」
ドラコがひどく驚いた顔をする。
「忘れたのかい?あれは君の杖だろ。あの杖のおかげで君は敵に捕まることなく、ここへ戻って来れたんじゃないか」
ロンがあきれたような声で答えた。
「………そうだったかな……」
ドラコは頭を振る。
人のような気もしたけど、記憶があいまいでうまく思い出せない。

「―――それじゃあ、ハリーは?」
「これに決まっているだろ」
傍らにおいてあるマントを指差す。
「えっ!ハリーって、このマントなのか?!」
今度は前と比べ物にならないほど、ドラコはひどく驚いた顔をした。
「ただのマントじゃないだろ。しっかりしろよ!これは高度な魔法によって作られた、透明マントだ。これを被ると、どんなものからでも見えなくなるっていう、とても優れたマントじゃないか」
「本当に、これがハリーなのか?」
「そうだ!」とロンの後ろにいた双子もニヤニヤ笑いながら、答えた。

「………そんな……」
ドラコの中の不安は、一気に喉元まで競りあがってくる。
何も思い出せない。
何も分からない。
今まで信じていた自分の記憶すら、すべてがあいまいで、ひどくたよりない。

ただ、ブロッドは確かに、ロンから言われたら、杖だったような気持ちもしてくる。
しかし、ハリーは絶対に自分といっしょにいたような気持ちがしたんだけど………。
それがマントだったなんて―――。

ドラコは真っ青な顔で、からだが震えてくるのを止められずにいた。
(………ハリーがいない。そんな……)
全てが不安で仕方がなかった。
「ハリーだけが自分を救ってくれる」という、この妄信的ともいえる思いはどうしたらいいのだろう?

(ハリーがいないなんて!)

ドラコは必死で辺りを見回した。
狭くて薄暗い部屋には、10人ばかりの人がいる。
その顔に記憶が混乱しているドラコには、まったく誰が誰だかよく分からない。
ただ、その中にハリーがいないことだけは分かった。
あまりの絶望感にたまらず涙がこぼれてきた。

(ハリーがいなければ、どうしていいのか分からない。ハリーがいなければ、これからどうしたらいいのか………)
ドラコは嗚咽を漏らした。

「大丈夫だよ、ドラコ」
そう言ってくれた、ハリーはどこにもいない。
その震えているドラコの様子を、信じられないような顔をして仲間が見つめている。
ドラコが泣き出すとは、誰も思っていなかったからだ。

一見してドラコの外見は、プライドが高くてひどくきつい印象がある。
誰も寄せ付けないような、孤高の雰囲気に、相手を見下して上から物を言いそうな態度。その造作のよい顔つきと、優雅な仕草は洗練されている。
彼の持つ上質の雰囲気は、真似しようとしても出来ない育ちのよさからにじみ出ている、生粋のものだ。
ドラコはどんなことがあっても、絶対他人に弱みを見せないタイプだった。

その彼が臆面もなく、泣き顔をみんなの前にさらしていた。
何よりも自分のプライドを重んじていそうな彼が、ポタポタと薄灰色の瞳から涙をこぼしている。
探していた相手がいないことが、そんなにも彼にショックを与えたのだ。
しんと部屋が静まり返った。