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Silver Cat

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「魔法薬学」の授業の前、早めにロンは教室に入った。

ハリーは放課後にあるクィディッチの練習方法の打ち合わせがあるので遅れるらしく、「先に行ってて」と言ったからだ。
ハーマイオニーのほうは何か大切な参考書を忘れたとかで、いったん寮に戻っている。

ロンはつまらなそうに、教室の端のほうに腰をかけてぼんやりと外を見ていた。
(今日は意地悪なスネイプの質問が自分に当たりませんように)とか、下らないことを考えていたので、隣に誰かが来たことを気づかなかった。

「ウィーズリー、何してるんだここで?一人なのか?」
馴れ馴れしく後ろから肩に、腕を回してくるやつがいる。
うるさそうに振り向きもせずに、ロンはその腕を振り払った。

自分にこんなことをする人物はこの学園でただ一人だ。
「触るな、マルフォイ!」
ぴしゃりと自分の手を叩いた相手を面白そうに、ニヤニヤと笑って見ている。

自分がここに座るのが当然だという、堂々とした素振りで、ふたり用の長机に、長いロープを広げるように、座り込んだ。
椅子に座っているロンと向かい合うように、堂々と机の上に腰掛けて、ゆったりと腕を組む。

「おやおや、ご機嫌ななめだね、ロニー」
キザったらしく肩をすくめる。
ハラリと撫で付けていた前髪が額に落ちて、それを振り払った。


そのポーズですら嫌味なくらい決まるのが、ホグワーツイチの王子様、

―――ドラコ・マルフォイだ。


身長は学年で一番長身であるロンにはかなわないが、その他はすべてドラコのほうが秀でているといっても過言ではない。
彼はこの学園内でかなり跳びぬけて目立つ存在だった。

色素の薄いプラチナブロンドを軽く撫で付け、スリザリンの緑のタイをボタンを外したシャツに緩く結んでいる。
授業は出たり出なかったしてサボタージュを繰り返しているのに、成績はいつもトップクラスだ。

人を見下すように見る薄灰色の瞳に、毒舌しか吐かない薄い唇。
いつも人を自分の下にしか見ない高慢な態度で、他人の言うことには一切耳を貸さない。長い足で肩で風をきって悠然と歩いている。
家柄も古く、父親は高官エリートだ。
俗に言う「敵なし」の存在だった。

ロンはイライラしながら、相手のことをにらんだ。
(苦手だ。こいつには近寄らないほうがいい。下手にこいつが近寄ってきたらいつも、ろくでもないことばかりが降りかかってくるし……)
ロンは眉間にしわを寄せて睨みつけ、あっちいけという態度をしめした。

そんな相手の邪険な態度も意に介さず、平気な顔で話を続ける。
「―――ああそうだ。今日、スネイプ先生は実験するんだってさ。前の授業のとき論理は一応習っただろ。それを証明するため実験だそうだ。ところでロン、お前は前の講義の内容をちゃんと理解しているよな?もちろん」
「……―――むむ……」
ロンはうつむいて、うなった。

(やばい、全く思い出せない。また嫌味を言われるのか)
げんなりしたロンの顔を見て笑いながらドラコは本を開くと、「ここだ」と指で示した。
「お前、昨日さぼっていただろ?なんで知っているんだ?」
胡散臭そうに相手を見上げる。

「さぼりじゃなくて、僕は頭痛持ちでね。保健室で寝ていたんだ。クラッブが昨日のことは教えてくれた」
「へぇー………、君が病弱な頭痛持ちとは知らなかったよ。初めて聞いた」
ロンはさりげなく嫌味を言った。

「まぁ、そう言うなって。寝不足はお肌に悪いんだ」とドラコは苦笑する。
「何で寝不足なのかはお前のことだ。どこで誰といたかなんて、野暮で聞かないけど………」
「そりゃあ、ありがたいね。お礼に、もし空き部屋を探したいときは聞いてくれ。君にとっておきの場所を紹介するよ」
相手をからかうようにドラコは答える。

「―――空き部屋なんかいったい、何に使うんだ?」
キョトンとした真顔で尋ねてくるので、ドラコは大きな声で笑ってバンバンと相手の肩をたたいた。
「さすがはウィーズリーだ!最高だな、お前は!とても鈍い!」
おもしろそうに笑い転げる。

それはよく言われるセリフだった。
「鈍い」とか「うとい」とか、「さすがはロンだ」とか。
うんざりする。
みんなからそう言われてしまうのはどうしてなのか、それすら気づかないことがこのロンの鈍さだ。

ロンは眉を寄せて、怒った顔で腕組みをした。

「実験方法を教えてやるからさ、機嫌なおせよ」
「なんでさぼっていたヤツから教えてもらわなきゃならないんだ」
ぶつくさ言いながらも、ドラコの説明に耳を貸す。

なんだかんだと言っても結構ドラコはロンのことをからかいつつも、面倒をみていた。
「お前は別荘で飼っていた赤毛のデッカイ犬によく似ているんだ」とか、訳の分からないことを言ってロンに邪険にされながらも近寄ってくる。

しかもドラコの説明は的を得ていて、簡潔で分かりやすい。
論理が多く言葉数も多いハーマイオニーの説明より断然よかった。

ふたりはひとつの教科書をのぞきこんで、ドラコの説明に相槌を打っていると、背後に影が出来た。
「―――いったい何しているの、ふたりで仲良く、肩まで寄せてさ!」
ものすごく不機嫌な声がした。

「ああお帰り、ハリー。打ち合わせは終ったの?」
ロンは気軽に振り返って、笑いかけた。
「うん、今まで長引いちゃって。―――ってそれよりも、なんでマルフォイが君の横に?」
じろっとハリーは相手をにらみつける。
「勉強教えてもらってた」
あっさりとロンは答えた。

「それなら、あんなヤツよりも僕に聞いてよ!」
勢いこんでハリーが言うと、「まさか」と相手は首を振った。
「君と僕とじゃ、焦がした鍋をたわしでこするぐらいの知識しかないじゃないか」
と肩をすくめる。

「ハリーは自分の学力を知らなすぎだよ」
ロンはヤレヤレという困った表情をした。
そんなふたりの会話をおもしろそうに見つめて、ドラコは小さく笑う。

「まったくロンの言うとおりだ」
その失礼な一言にハリーはドラコをにらみつけた。
ドラコは余裕たっぷりに、ロンの肩を抱くようにさりげなく回していた腕をこれみよがしに、ハリーの前でヒラヒラさせた。

ハリーの顔がひきつる。
おもむろに、パシリとドラコのその手をはたいた。
「イタタ……」
嫌味ったらしくドラコは大げさに痛がるそぶりをする。

「ロン、君の友達は暴力的でイヤだね。―――やっぱり友達は選ぶべきだ」
どこかで聞いたことがあるセリフを、いけしゃあしゃあとドラコは発した。
「この僕のようにな!」
そう言ってさりげなくロンの肩を抱き、ほほにチュッと音をたてて軽くキスをする。

「なぬっ!」という顔のロン。
ハリーが怒りのあまりドラコに食ってかかってきたが、猫のようにひらりと身をかわすと、片方の口元だけ上に引いて笑った。
ニヤニヤと人が悪い笑みだ。

どちらをからかっているのか、もしかしてその両方なのかすら分からない。
いつもシニカルな笑みのドラコは、いったい何を考えているのかさっぱり表情が読めない。
光が当たると淡く透けてシルバーに見える瞳が細められた。

それを見て落ちない女の子はいないとさえ言われている極上の笑みで、「またな」とふたりに言ってその場所から離れていった。


作品名:Silver Cat 作家名:sabure