Calvados
おまけ
翌朝。
「ヤバイ、遅刻、バイト」
昨晩は色々とありすぎて、なによりもあまりのベッドの心地良さにすっかり眠り込んでしまった。目が醒めればバイトの時間を過ぎていた。不味いと慌てて電話を入れると、妙に機嫌の良い店長からこう言葉が返ってきた。
「今日はシフト入ってないぞ。この前替わって貰っただろう。その代わり今度連勤になっちゃうけどよろしく頼むよ」
その言葉でどうやら、本日のバイトはシフトの変更があったことを知る。ならば、他のバイトはどうしたのだろうかと、思ったときに店長は更なる言葉を続けた。
「そういえば、君。知り合いも仕事休みだからなんだとか言ってたけど、それ付き合っている人かな、今度紹介してよ」
「えっ、恋人とか居ません、居ませんから」
慌てて通話を切れば隣ではもぞもぞと人が起きる気配がした。
「あっ、起こしましたか?」
「いや、その件なんだけど……」
「はい?」
「俺の今日の予定全部キャンセルになってるんだ」
「はあー」
店長の言葉が公麿の脳内でぐるぐると回っている。
「とりあえず、もう少し寝ないか?」
「あっ、はい……」
布団の中に引きずり込まれるように伸ばされた腕に、抗うことなく公麿は引きずり込まれると久しぶりの惰眠を貪った。