Thank you
やがて、意識を取り戻し体調がよくなると、ドラコはもう、ハリーに自分の気持ちを隠すことなく、全身で思いをハリーにぶつけてくるようになる。
感情の起伏が激しく、熱烈で、強烈で、呆れるほど我慢出来ない性格が、ドラコらしかった。
ちょっとしたことで笑顔になって、そのくせ怒りっぽくて、独占欲は人一倍だ。
あのきれいな、ツンとすました氷のような美貌で、ハリーだけには、いつも別の表情を見せてくれる。
愛の言葉を甘くささやく。
ハリーはそれが、涙がでるほどそれが嬉しかった。
甘え上手な恋人は、自分の背中にまとわりつくようにして眠る。
いつも、いて欲しいときに、側に寄り添ってくれる。
その暖かさに泣きそうなってしまう。
自分はもう、ひとりぼっちじゃないと、心から思うからだ。
ドラコはハリーの身に降りかかってくる、激烈で過酷な、どうしようもない運命を嫌い、呪っていたけれど、逆にハリーはそれに感謝したいほどだ。
それがあったからこそ、今のふたりがいる。
あったかい気持ち。
素直な気持ち。
すべてが満たされる気持ち。
やさしい気持ち。
感謝の気持ち。
──そして愛おしい気持ち。
そんな思いをひっくるめてハリーはドラコを抱きしめ、ドラコはハリーを抱きしめ返す。
たがいのぬくもりが溶け合って、ゆっくりとゆっくりと広がっていく。
(誰よりも大切な人)
(君だけが僕のココロに触れることができる)
君がそばにいてくれる。
それがとても嬉しい。
―――ありがとう―――
■END■
*映画の「炎のゴブレット」を見て、思いついた小説です。
傷だらけのハリーを見てとても痛々しくて、あの傷はきっとからだだけじゃなくて、心まで深く傷ついているんじゃないかなと思って、その部分を書きました。
傷だらけの彼を見て、やっと自分の本心に気づいたドラコ。
このお話のドラコは、気付くのが遅くなり過ぎなくて、本当によかったと思いました。