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【ふたりは~シリーズ 2】ふたりはいつも

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放課後、芝生に並んで座っていたら、突然ドラコが話しかけてきた。

「なあ、デイジーって、どう思う?ハリー」
「ええっと……、どう思うって、質問の意味が分からないんだけど?」
ハリーは首をかしげる。

今まで自分の世界にいたような、ぼんやりとした表情のままドラコは顔を上げて、ハリーに笑いかけてきた。
「ああそうか。まだデイジーのことを、キミに話していなかったっけ?君のグリフィンドール寮の、一つ下の学年の女の子だよ。知らないのか?あんなにかわいいのに―――」
「そんなかわいい子、いたかな?」
「いるよ、金色の巻き毛が腰まである、水色の瞳で、手足が細っそりとしていて、顔は―――」

ここで一端、ドラコはしゃべるのを止めて、ハリーの耳元に口を寄せて、
「ちょっとね、リスに似ているんだっ!」
と、囁く。

それを思い出したのか、(うわーっ、たまんないっ!)という表情で、ドラコは照れまくって、ハリーの肩をパンバンとたたいた。

ハリーはいつもの惚れっぽい、聞き飽きたドラコの片思いの告白なんかより、いきなり自分に耳元に、そっと息を吹きかけられたほうが、たまらなかった。
カァーッと顔が真っ赤になる。

(僕はやっぱり変かもしれない)
ハリーは熱を持つほど真っ赤な顔を隠すように、そっとうつむいた。

彼は近頃、こんなちょっとした出来事ですら、変に意識してしまう。
この沸き立つように溢れてくる、ドラコへの思いに戸惑っていた。

(ドラコといると、なんでこんなにも感情の起伏が激しくなるんだろう?……僕たちはただのともだちなのに、なぜ?)

ハリーはいつのまにか、ドラコとの友情に、何か別のものが含まれているような感じに、頭を抱えていた。
こんな自分の感情なんか知らないし、とてもヘンテコなものだと確信している。

(だって今、隣で盛大に瞳を輝かせて、片思いの女の子の話をしているドラコの嬉しそうな顔が、とてもきれいに見えるなんて、きっと僕は病気で、頭がおかしいんだ……)

ハリーは重くため息をついた。

それを目ざとく見つけたドラコが、怒った顔で詰め寄ってくる。
「―――あっ、ハリー!僕の前で、これ見よがしにため息なんかついて、ひどいぞ!!やっぱり、口には出さないけど、思っているんだろっ!!僕が惚れっぽくて、またすぐフラれるって。くーーーーっ、キミなんかこうしてやるっ!」
すかさずドラコは両手をハリーに突き出すと、その無防備な両脇に指を突っ込んだ。
そして、脇やわき腹に細い指で爪を立てて、くすぐり始める。

「うわっ!!やっ……やめろよ、ドラコ!うぁーーーー、くすぐったいから……」
ハリーは身をよじって、その手から逃げだそうとする。

「逃すもんか!日ごろの僕の恋をバカにしている罰だっ!」
覚悟しろとばかり、背を向けて逃れようとするハリーを背中から抱きつくように羽交い絞めにすると、容赦なくくすぐり始めた。

「わはは……。はは……。ちょっと、ちょっと待って、ドラコ!」
本当にハリーはわき腹をくすぐられるのが弱かった。
めちゃくちゃ、そこが弱い。
それを知っているのは、このドラコくらいしかいなかった。

ドラコはあの冷たい外見からは想像できないほど、まるでじゃれるように、無防備な仕草で、ハリーの背中にもたれてきたり、腕をつかんだりして、自然に触れてくる。
また、薄暗いひとけが無い廊下などでは、手まで握ってきて、離そうとしなかった。

「怖いの?」
とからかうように言うと、
「別に怖くないぞ!暗くて転んだらいけないから、手をつないでいるだけだっ!!」
とても臆病なくせに、平気で意地っ張りなことを言う。

そんな、子供ぽくて、わがままなドラコがハリーは好きだった。

ドラコは甘えるように身を寄せて、頭といわず、胸も、腰も、足も、ハリーのからだ中のありとあらゆる所を、触りまくってくる。
別にそこには性的な意味はなく、ただ、ハリーの存在を確かめたかっただけのようだ。

「いいなー、この胸板。僕も筋トレしようかな」とか、
「やっぱり腰はお互い、もっと太くなりたいよなー。腰が据わってないと重心が定まらないというか、箒の方向転換のときに、もっと早く回転できるようになると思わないか?」とか、
いろいろ言っている。

ハリーと自分のからだつきの違いを確認して、もっと「こうなりたい自分」というものを、想像しているのだろう。
ドラコの理想の自分というのは、ハリーから言わせると、「顔に似合わず、かなりマッチョなイメージ」らしい。
そんな筋肉質な姿など、この上質で整った繊細な容貌には、全くそぐわないことに、ドラコ自身が気づいていなかった。

つい先日、いつものように、ハリーのからだを触りまくっていたついでに、両脇に手を差し込んだ途端、ハリーが身をよじって笑い出したことをドラコは発見した。
その瞬間、ドラコが意地の悪い顔でニヤリと笑った。
「ハリーの弱点を発見したぞっ!」とばかり意気揚々とドラコは、ハリーが自分をいじめたりバカにしようとしたら、思いっきりわき腹くすぐる攻撃を仕掛けてくるようになっていた。

ハリーはそれに降参してばかりだ。
いつも「僕が悪かった、ドラコ!」と謝ってくるまでは、ドラコはその攻撃の手を休めることはない。

今日もその攻撃を受けて、芝生に座っていたハリーは逃れようと、四つんばいのまま這って後ずさる。
「逃すもんか!」
ドラコは上からからだごと被いかぶさって、自分の重みで相手を動けないようにガードする。
そして、身動きできないハリーに容赦なく、わき腹くすぐり攻撃を続行した。

「ひゃひゃひゃひゃ……ううっ―――、くる、苦しい、ドラコ。息が出来ない」
「どうだ、参ったと言え、ハリー!!」
「言うもんか、ドラコの惚れっぽさは、本当だからな!」
「ああ、くそーーーーー!!」
ドラコはうつ伏せのハリーの背中に馬乗りになると、足をつかって胴を締め付けて、相手が逃れきれないようにして、徹底的に両手でくすぐった。

「くるしーいっ!!……うう、くくくく……」
「だから降参と言えよ。僕が言い過ぎましたと、言え!」
「やだよ……いやだっ!」
ハリーはドラコの下で足をばたばた動かして、身をよじりまくった。

まるで、今のこのふたりを傍から見ていると、大きな犬が2匹でじゃれあっているように見えるだろう。
「降参は、ハリー?」
ドラコも暴れるハリーを押さえつけるのに疲れてきたし、ハリーは笑いすぎて息もできない。
「……ハーリィー?」
語尾を上に伸ばす、意地悪なドラコの問いかけに、ハリーは両手を上げた。

「分かったよ。もう参りましたっ!!」
ハリーはしぶしぶ、今回も自分の負けを認めて謝る。
ドラコは満足そうな顔で笑う。

「重たいから、ちょっとどいてくれよ、ドラコ」
ハリーは地面に寝そべったまま、自分の背中に馬乗りになっている相手を振り返って見上げた。
すると思ったよりずっと近くにドラコの顔があることに、ハリーは驚く。

ドラコのハアハアと上がった息。
上気したほほ。
うっすらと汗をかいた額。
それらは、なぜかハリーには別のことを想像させてしまい、ドクンと心臓が飛び上がった。

相手の表情にうっとりと見とれてしまう。