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【ふたりは~シリーズ 2】ふたりはいつも

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(ああ、もうきっと僕はおかしいんだ。ドラコはいくらきれいでも、男なのに―――)
ドキドキと胸の鼓動が早鐘を打った。

(ドラコは僕の大切な『ともだち』だろ?何、バカなことを考えているんだ)
ハリーは眉を寄せると、自分を叱咤する。

(ともだちにこんな感情を持つことなんて、絶対に間違えている。こんなにドキドキするなんて。──ああ、こんな感情なんかなくなってくれたらいいのに……)
唇をかみ締めると、ハリーは押さえても沸いてくる、自分の感情を憎んだ。

ドラコは覗き込むように、じっと口元に笑みを浮かべたまま、ハリーを見ている。
薄青い瞳はけぶるように美しく、汗で張り付いたプラチナの髪が光をはじいていた。
少し前に替えたフレグランスは『フローズン・ミント』で、涼やかな香りがハリーの鼻腔をくすぐる。

(……ああ、僕はこんなバカな自分の願望だけで、大切なともだちを無くしたくはないのに……)
ハリーはゆっくりと沈んだ気持ちになった。

無くしたくはないのに、何かを期待しているなんて、自分の都合のいい願いに、自嘲気味に唇をゆがめる。

(早くこんな思いを断ち切らなければ……。ドラコはこんな感情など理解しないはずだ。相手はいたってノーマルで、保守的な考えしか持っていないのだから―――)
ハリーは暗い気持ちで、瞳を閉じた。

(……もし、僕が同性しか好きになることが出来ない嗜好ならば、そういう相手を別に探せばいいだけだ。―――決して、その相手にドラコを選んではダメだ。この目の前にいる相手に告白すれば、今まで築き上げてきたものが、全て壊れてしまう……)
この思いは出口がなくて、日々苦しくなる一方だった。

しかし、ハリーはどんなに苦しくても、ドラコに自分の思いを告白しようとは思ってはいない。

それは自分が傷つくのを恐れているのではなく、逆にドラコのことを大切に思っているからこそ、必死の決意でそう決めていた。


──いつも悲しいほど一人ぽっちで、虚勢を張っていたドラコがやっとみつけた、心許した相手がハリーだった。
意地っ張りで、あまのじゃくで、素直になれない、生きるのが下手くそな、プライドばかりのドラコの、唯一の『ともだち』が、自分だった。

ドラコが『ともだちのハリー』の存在を、どんなに嬉しく思い、大切にしているのかを十分理解していたからこそ、絶対にその真摯な彼の思いを壊したくはなかった。

あんなにも信頼を寄せてくれているのに、今の自分の中にある思いなど、裏切りと同じ意味を持っていることくらい、ハリーはしっかりと理解していた。

ドラコはハリーとの関係には、純粋な友情しか望んではいないし、逆に隠していた感情を告白したとしても、「今までそんな目で自分を見ていたのか」と、相手はひどく傷ついてしまうだろう。

──誰よりもハリーは、ドラコのことが大切だった。
だから、自分の秘めた恋の成就など、これっぽっちも望んではいなかった。

(それに、もっとドラコより好きになる相手が、これから出てこないとも、言いきれないしな)
と自分に言いきかせる。

本当はそんな相手など、絶対に出てこないことは分かりきっていたけれど、『二番目』に好きになる相手なら、探せばなんとか出来そうだったからだ。