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【ふたりは~シリーズ 2】ふたりはいつも

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「―――ハリー……」
少し舌っ足らずの、甘えを含んだ声で、ドラコが呼びかけてくる。

「なに、ドラコ?」
ハリーはその声にすら、腰にジンとくる痺れが走る。
うっとりと相手を見上げた。

「おまえさー……、なんかさ、汗臭いぞ。コロンとか付けないのか?」
ドラコの容赦ない言葉に、ハリーはショックで気分を害して、そっぽを向いた。

「悪かったな、汗臭くてさ!コロンなんてものは、つけたことがないから、分からないんだ。すまないね!これでも毎朝、きちんとシャワーを浴びて、清潔にしているつもりだけどな、僕としてはっ!」
ムッとした口調で答えるハリーの姿に、ドラコは苦笑すると、そのままそっと、相手の首筋に鼻を寄せる。

ドラコの鼻先がハリーのうなじに触れて息がかかり、ハリーはその感触の心地よさに、からだが震えそうだ。

「……別にハリー……。僕はお前の汗のにおいは嫌いじゃないぞ」
それは聞く者が聞けば、かなりセクシャルな意味にしか取れない言葉を告げる。

(ドラコは僕の匂いが好きなの?)
ハリーは相手の言葉に、眩暈がしそうになった。

「―――でも別の香りが混じれば、もっといいと思う。例えば、僕が使っている『アイス・キューブ』とか―――」
そっと、ドラコはハリーの頬を撫でて、甘くささやく。

「―――それって、どんな香り?」
「……まずそれを肌につけると、ひんやりとして、まるで氷みたいなんだ。そして、すうっという冷たさのまま、肌に解ける。そのあと、ウォーターフルーツと、バルガナムの香りが、匂いたってくるんだ。そして、最後にミントの涼やかさが、全身を包むんだ。ゆっくりと……。―――そういうコロンはどうだ、ハリー?」

ゆらゆらと、虹がかかったように揺れるドラコの瞳に、吸い込まれるようだ。
「……悪くないね」
もう喉がカラカラで口の中が乾き、そう答えるのがやっとだった。
相手の目を見つめ返したまま、ハリーは魅せられたように頷く。

目の前のドラコは、近づきすぎた顔を離そうとはせず、逆に今度は、そっと両手を出して、やさしくハリーのほほを包んだ。

「―――ドラコ……」
「──なに?」
「僕たち、顔が近づきすぎていないかな?」
ぎりぎりの理性を振り絞って、ハリーは相手に注意を呼びかける。

「そうだな。近すぎているかもな。ハリー……」
クスリとドラコは笑うと、もっとハリーに顔を近づけてきた。

もうふたりの距離は、鼻をぶつけそうな距離しかなく、お互いの顔が視界いっぱいに広がっている。
見つめると、ドラコの瞳の中に、自分の切羽詰ったギリギリの表情が映っていた。

──その顔はとても、切なそうにも見えた。

「ハリー、キミは誰かとキスしたことがある?」
その質問の意味は、誘惑にしか聞こえなくて、ハリーから最後の理性を奪っていこうとする。

「ないよ。誰とも、したことがない」
「―――実は僕もさ。だから、……キスしないか?」
「なんで、僕と?」
熱に浮かされたようにハリーは問う。

「だって、練習がしたい。失敗したくないもの。そして、もし練習をするなら、相手はキミがいい。僕はキミがいいんだ……。だからキスしよう―――」
ドラコが唇を寄せてきたとき、もうハリーは抗えるはずもなかった。

お互いが薄っすらと瞳を開いたまま、見つめあって唇を重ねる。
触れ合った唇の柔らかさと、甘やかさに、もうとろけそうになる。

ハリーは幸せすぎて、胸がいっぱいになってしまった。
そして思う。


(ドラコはズルい)と。


(もうこんなキスをドラコからされたら、もう僕はキミ以外誰も、好きになれる訳ないじゃないか。……ひどいよ……)

触れるだけのキスを繰り返しながら、ハリーはつぶやく。
「―――ねえ、ドラコ。このキスは練習なの?」
「そう……。練習だよ、ハリー」
ドラコの答えにハリーは胸が痛み、泣きそうになった。

「だけど、キミとのキスはこんなにも甘いね……」
吐息に蜜を混ぜたような、やんわりとしたドラコの微笑み。

「ああ、とても甘く感じるのは、どうしてかな?ハリー……、今キミは魔法を使ったのか?」
「―――まさか」
ハリーは小さく苦く笑った。

ドラコは自分が言った言葉の意味を理解していない。
ハリーの頬を愛撫するように、愛おしく撫でるのも、しっとりと何度も重ねているキスも、みんな練習だと言う。


(残酷なドラコ……)
ハリーは心の中でつぶやいた。


ドラコが触れてくる指先。
熱を含んだからだ。
混ざり合うような息。
せりあがる鼓動。

そのすべてが複雑に絡み合い、ハリーに眩暈を起こさせる。

頭の中にプリズムの虹彩を感じて、すべてが幻のように輝いて、反射しているようだ。


二人はどちらからともなく、何度もくちびるを寄せてキスをした。


その口付けは、深くなることはなかったけれど………




ハリーはもう悲しくて、幸福で、どうしていいのか分からなくなる。





薄桃色の花が咲いている草の上で交わしたキスは、心に沁みるほど甘くて、

                 ハリーを切なく幻惑させたのだった―――



   ■END■