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SLAMDUNK 7×14 作品

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その人がいるだけでチームが活気付き、シュートを決める姿は一枚の絵みたいにきれいだった。

ん? とオレの思考が待ったをかける。そんな話、聞いたことあるような無いような。

いつもすごい自信を持ってプレーしていて、スーパースターの名はあの人にぴったりだった。県大会の決勝で、ブザー寸前に決めたゴールには会場にいた誰もが感動した。そして、その年の中学MVPに選ばれたんだ。

…なんか知ってる。その話、オレは知ってるぞ。
どっかのバカが体育館に乗り込んできたとき、小暮さんから聞いたんだ。
顔を上げてバッグの学校名を読む。
『武石中 バスケットボールクラブ』
衝撃だった。
頭の奥を、あの人の顔がよぎる。

「その人は今、どうしてるんですか?」

元部長は俯きながら首を振った。

「分からないんだ。高校に行ってから、全く姿を見なくなってしまった。もしかしたらもう、バスケットは止めてしまったのかもな」

途端にしゅんとうなだれた中学生たちは、ぜひ試合を見たかった、と口々に言った。
あの人って、そんなに慕われていたんだ。
いや、人を惹き付ける何かがあること、オレ自身が良く分かってるじゃないか。

自称MVPじゃないってことは練習してて分かったけど、そこまですごい選手だとは正直なところ思えなかった。
3Pシュートには一目置いているが、あの体力の無さは致命的だ。それにムラがある。気持ちがプレーに出てしまうんだ。

瞬間に分かってしまった。
……三井サンが、失ったもの。
自信と、体力と、仲間と。地位も名声も信頼さえも。
残ったのは純粋にバスケが好きな気持ち。

電車は速度を落とし、やがて自分の降りる駅へと滑り込んだ。
ドラムバッグを持って立ち上がる。
ついさっきまで一緒にいたあの人のことを思い出した。
降り口には三井サンの後輩たちが立っている。
何か言おうと思ったけど、やっぱり止めておいた。
あの人の活躍は、夏には彼らの知るところになるだろうから。

オレのパスで、シュートを決めてよね。
アンタを最高の舞台に引っ張り上げてやるよ。今までの後悔なんか吹き飛んじまうくらいの、さ。

ホームへと降り立った。後ろで扉が閉まる。その場でオレは目を閉じた。
あの、屋上での空を思い出す。あの人の横顔を思い出す。
あんたが歩いてきた道は間違いじゃなかったと、オレが証明してやるよ。




そのときのオレは、大好きなあの子よりも、アンタに笑ってもらうことばかり考えていたんだ。





作品名:SLAMDUNK 7×14 作品 作家名:鎖霧