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SLAMDUNK 7×14 作品

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Can I kiss you?














「は?」
振り返ると、三井サンが居た。
でっかい体をカチンコチンにして、ピシッと背を伸ばしたまま。その顔はさくらんぼのように真っ赤で、さっきから目線がさまよっているのは、どこを見ていいのか迷っているからなのか。
きゅっと引き結ばれた唇は俺の聞き返しに答えることはなく、力はいりすぎの姿勢を保っていた。

「今、何て言ったの、三井サン」


呼び止められたのは2年の教室前の廊下。さあ今から部活だと、張り切って飛び出したら、すぐにひたひたと付いてくる人が居た。
張ってやがったな、と思ったものの、俺は振り向きはしなかった。
だって三井サンなのは分かっていたから。
このまま部室まで付いてくる気かと思って、面白いかもと考えた。
ヤス辺りに言わせると、それは恐ろしい光景なんだそうだ。
三井サンがバスケ部に復帰して、なじもうと必死になっていたあの人に、俺はこれ以上なく優しくしてやった。
とばっちりを食らった被害者である俺が、わがままはた迷惑加害者の、とんでもなく俺様な三井サンと仲良しになったわけだ。
もちろん、フェイクで。
俺は案外単純でおバカな三井サンにほくそえみ、内心でゲラゲラ笑っていた。
……はずなんだけど。
思いのほか懐いてきた三井サンに、ついうっかりドキッとさせられることがあったり、ついうっかり触りたくなるような白い首筋に気づいたり、またまたうっかり抱きしめてしまいそうな衝動に駆られたりして。
そんなこんなでぐずぐず思い悩んだ末、俺は三井サンとつかず離れずの距離を保つことに決めた。
自分でもうまくやっていたと思う、この2週間。
傍目から見たら相変わらずの先輩・後輩だったろうし、中々いいガードコンビだったはずだ。
なのに三井サンは感づいた。俺が離れていることに。
3日目くらいにちらちらと伺うような視線を感じた。それでも気にせずに続けていたら5日目に何でなんだ聞かれた。のらりくらりとはぐらかして、週が変わったその日から今までの4日間。三井サンは執拗に俺の側に来た。というより後をつけられた。宮城リョータ君の半ストーカーと化したのだ。
結果、一定の距離を保とうとしたことが裏目に出て、一気に向こうから間合いを詰められたことになる。
そんな俺たちを見てみんなは、鳥の親子、といった。俺よりも16センチでかい雛鳥は、どかどかと大股で歩き、俺の後をついて回る。
そして、さっき。



―――キス、していいか。




一向にこっちを見ない三井サンに痺れを切らした俺は、近寄ってその胸倉を掴んだ。
「アンタね、何にも分かってねーくせに、変なこと言うなよ」
ぐ、と詰まった三井サンは、ますます熟れた顔色をして、今度はまっすぐに俺を見た。
固く閉じていた唇が開き、もう一度繰り返す。
「キスしていいか、宮城」
かーっと頭まで一気に熱くなった。
怒りのせいではなく、心臓が煩い。こうなるのがイヤだったからこそ、距離を置くって決めたんだろうが!

「絶対、しねえ」

言うと、三井サンはすっと離れた。
逆に力いっぱい前のめりに三井サンを掴んでいた俺は、いきなり下がられて前へつんのめった。
絶妙なボディバランスで何とか倒れこむことを防いだ俺は、勢いよく三井サンを見る。

ぼろぼろと、涙が落ちた。

低く唸って、下唇をかみ締めて。
ぎゅっとこぶしを握ったまま、三井サンは泣いていた。
「え?」
意外なほど間抜けな声が出て、自分でも驚いた。
そのまま三井サンはくるっと身を翻して、少女漫画のヒロインよろしく走り去っていく。

なに? 何がどうなってこうなったんだ!?

やがて廊下を曲がって消えた三井サンの背中。俺はへたへたとその場に座り込んでしまった。
あの人が言った言葉を思い起こす。
キスしてもいいかと聞いてきた。
なんでしたいのか、聞き返してやればよかったと今になって思って、確か絶対しないって言い切ったよな、と激しく後悔した。
ぶっちゃけ、三井サンに健全青少年としてはよろしくない感情を抱いてしまっている自分としては、これは紛れもなくチャンスだったのだ。
しかし。

なんで???

あの言葉が出てくる理由が分からない。
あの人の言いたかったことが分からない。

「なんで…!?」
言葉にすると、もっと分からなくなった。




そうして俺は、ヤスが慌てて呼びにくるまで、その場を動けないでいた。















作品名:SLAMDUNK 7×14 作品 作家名:鎖霧