陰陽師
今日都で犬神を式として使用する陰陽師の話題がもっぱら民衆達の関心を買っていた。
美しい白毛の犬神を使役する陰陽師はまだ幼いらしく、
けれどその力は都に存在する全ての陰陽師を凌駕するほど。
噂は噂を呼び、尾びれ背びれがついて更に話を肥大させていく。
その話題の人物は今日も今日とて、心の底では面倒だと思いながら、
表面上には笑みを貼り付け仕事をしていた。
(全く・・・だからどうしてそういうことをしちゃうのかなぁ)
莫迦だろ、と思いながらそれでも食っていくためには、
そんな馬鹿げた仕事をこなさいといけないわけで。
吐きたくもなるため息をかみ殺し、帝人は分かりましたと笑みを浮かべた。
「私があなた方の依頼、遂行してご覧に見せましょう」
その日の夕刻、帝人はあまり人通りが少ない脇道を歩きながら家路へと急いでいた。
そんな帝人の足下から、男の声が響く。
帝人は足を止めることなく、なんですか?と呟き返した。
すると突然、帝人の目の前に白い衣の男性が姿を現す。
ふさふさな尻尾を垂らして、どことなく沈んでいるようだった。
「どうして帝人は、その・・・人間が嫌いなんだ?」
帝人はまたか、と思いながら息を零す。そして腰に手を当てて、
己を寂しそうな目で見つめる式紙を見すえた。
「静雄さん、いい加減にしてください。何度も言わせないで。
僕は人間が嫌い。理由なんて貴方に話すことでもない。はい、そこをどいて」
帝人は今日あった仕事の所為で些か腹の虫どころが悪く、少しばかりいらだっていた。
そんな帝人の言葉に更に静雄は尻尾を下げ、耳を垂らす。
「あぁ・・・わかった・・・ごめん」
静雄はそう言うとまた現れたときと同じように一瞬のうちに姿を消してしまう。
帝人は今日何度目か分からないため息を吐いたかともうと、
競歩になりつつある速度で館へと急いだのだった。
美しい白毛の犬神を使役する陰陽師はまだ幼いらしく、
けれどその力は都に存在する全ての陰陽師を凌駕するほど。
噂は噂を呼び、尾びれ背びれがついて更に話を肥大させていく。
その話題の人物は今日も今日とて、心の底では面倒だと思いながら、
表面上には笑みを貼り付け仕事をしていた。
(全く・・・だからどうしてそういうことをしちゃうのかなぁ)
莫迦だろ、と思いながらそれでも食っていくためには、
そんな馬鹿げた仕事をこなさいといけないわけで。
吐きたくもなるため息をかみ殺し、帝人は分かりましたと笑みを浮かべた。
「私があなた方の依頼、遂行してご覧に見せましょう」
その日の夕刻、帝人はあまり人通りが少ない脇道を歩きながら家路へと急いでいた。
そんな帝人の足下から、男の声が響く。
帝人は足を止めることなく、なんですか?と呟き返した。
すると突然、帝人の目の前に白い衣の男性が姿を現す。
ふさふさな尻尾を垂らして、どことなく沈んでいるようだった。
「どうして帝人は、その・・・人間が嫌いなんだ?」
帝人はまたか、と思いながら息を零す。そして腰に手を当てて、
己を寂しそうな目で見つめる式紙を見すえた。
「静雄さん、いい加減にしてください。何度も言わせないで。
僕は人間が嫌い。理由なんて貴方に話すことでもない。はい、そこをどいて」
帝人は今日あった仕事の所為で些か腹の虫どころが悪く、少しばかりいらだっていた。
そんな帝人の言葉に更に静雄は尻尾を下げ、耳を垂らす。
「あぁ・・・わかった・・・ごめん」
静雄はそう言うとまた現れたときと同じように一瞬のうちに姿を消してしまう。
帝人は今日何度目か分からないため息を吐いたかともうと、
競歩になりつつある速度で館へと急いだのだった。