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かなや@金谷
かなや@金谷
novelistID. 2154
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chafe

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「現実世界での影響って奴を確認しにきたのかな?」
「…………」
 事務所の荷物の搬入が一息つき、他の仲間達は休息を取っていた。その場に現れた襟足の長い青年に宣野座は自ら声をかけた。
「それとも、心配だったのかな……」
「そんなものするはずないだろう」
「僕にじゃなくて、彼の心配ですよ。余賀君の……」
 貴公子然とした立ち振る舞いの宣野座は、一般的な美意識を持っている者からすれば美しいと形容される容姿を持ち合わせていた。初夏の風を思わせる、涼しげな男は長い睫を携えた瞳で件の少年が現れた方を見つめていた。
「何を話していたんだ」
「そんな怖い顔しないでくださいよ。貴方の余裕のない表情は初めてだな……」
「そうだったかな……」
 宣野座に指摘されるまで、三國は自分が焦っていることも、怒っていることも判らなかった。感情をコントロールすることは基本中の基本のはずだ。それを指摘されるまで気付かないとは、自嘲気味に三國は笑みを浮かべるといつも通りの仮面を被った。
「つまんないなー、もう元に戻るなんて、どんなディールでも現したことなかったのにな……」
「俺のことよりも、質問に答えて貰らおうか?」
 質問?と長い前髪を指で軽く絡めると、宣野座はその指先を大袈裟に動かしながら改めて思い出したように口を開いた。
「何も話してませんよ。貴方が心配するようなことはね」
 それだけ聞けば満足だと言わんばかりに、踵を返そうとする三國に宣野座はトーンをあげて声を掛けた。
「面白い子だよね。余賀公麿君は…… 僕だって傷付けたくないなぁ」
 動きを止めた三國に宣野座は一歩近付くと、さらに続けた。
「彼に負けてすっきりしちゃったよ。あなたが目を掛けるのも判るなぁ…… 安心した?」
 上目遣いで、まるでその仮面の裏側を覗き込むような飄々とした宣野座の視線から、三國は逃れることはせずに堂々と見据えて口を開いた。
「なんの話だ」
 あえて自分からは何も話す気がないらしい三國に、宣野座は肩を竦めると未だ片付けていなかった一つの小箱を男の前に突き出した。
「募金にご協力お願いします」
 突きつけられた箱に、一瞬三國は竦んだが、すぐにポケットから無造作に折りたたまれた万札を取り出した。何枚かをその束から抜くと、小箱の上部にある細い入口に突っ込んだ。
「ご協力ありがとうこざいました」
 宣野座は恭しく一礼をした。

作品名:chafe 作家名:かなや@金谷