【腐デュラララ!!】4月病【シズイザ】
チャイムが鳴ってから、どれくらい時間が経っただろう。
屋上のフェンスに背を預けながら、平和島静雄はぎりぎりまで吸い尽くしたタバコを口から離した。
目の前を掠める紫煙は、薄く霞んだ春の空をますます淡く見せた。
背後からは教室の窓が開いているのか、老いた男の、おそらくは静雄の新しい担任教師の声が微かに聞こえてきた。
新学期早々、よくもこんなに長々と話すものだ。正直、教師のありがたい話にも新しいクラスにも、興味はなかった。
こうして一人で、日向ぼっこをしているほうが、静雄にとっては有意義だ。
本格的に学校が始まれば、また静雄に喧嘩をふっかけてくる奴らが現れるだろう。
見も知らぬ相手に罵倒され、殴りかかられ、静雄も相手を罵倒して、殴り返し、吹き飛ばす。
高校に入学してからの1年間、特に、あの折原臨也と会ってからは、静雄は毎日そんなことを繰り返してきた。
負けるつもりはさらさらない。大体、静雄が力で人に劣ることはありえない。
しかし、こんな鉄の様な身体の持ち主でも、中身は人間だ。飽きもすれば、弱りもする。
今日学校に来ることさえ、静雄には相当憂鬱だったのだ。
それでもこうして形ばかりでも登校してきたのは、あのノミ蟲に屈したくない、という思いが勝ったからだ。
かといって、アイツからまた面倒ごとを押し付けられるのもいやだった。
今日はアイツも学校にいるはずだが、教室を覗けば、俺は休みだと思うだろう。
こんな天気の良い、気分のいい日に喧嘩など真っ平ごめんだ。
静雄は煙草を床に押し付けると、フェンスに体重を預け、静かに目を閉じた。
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もうすぐチャイムが鳴る頃かな。
折原臨也は、教室に入ろうとする生徒たちの流れに反して、悠々と廊下を歩いていた。
時折送られる女子生徒たちの視線に適当に笑みを返しているうちに、生徒玄関に着いた。
目的の下駄箱を開いて、臨也はにやりと唇の端を上げた。
「本当にシズちゃんってお馬鹿さんだよねー…」
教室にはいないけど、きちんと外靴が入っている。ということは、まぁ、屋上あたりが鉄板かな。
ろくな授業もない新学期の初日にわざわざ登校してきたのは静雄をからかうためだ。
さすがに喧嘩相手を用意してはいないのだけれど、そっちのほうは今日ぐらいお休みさせてあげてもいいだろう。
臨也は気分よく鼻歌を歌いながら、足取りも軽やかに階段を昇っていく。
屋上に続く扉を開いたところで、ちょうどチャイムが鳴った。
「しーずちゃん♪」
作品名:【腐デュラララ!!】4月病【シズイザ】 作家名:rikka