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Crazy Party

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第1章 さぁ、パーティに出かけよう!



いつものように、夕方までは自室で、マルフォイ家の財産を少しでも潤わそうとしたのか、それとも減らそうとしたのか、めまぐるしく変化する株の取引をしていたはずだった。
ホグワーツを卒業し、まだ数年しかたってはいなかったけれど、それでも、家督の一部を任され、自分の采配で資産運用をすることは、彼の大切な仕事のひとつになっていた。

数字ばかりを追いかけて、目に軽い疲労を覚えた頃、一人の人物が部屋のドアをノックして、返事を待たずに、勝手に扉からスルリと音もなく入ってきた。

「ハーイ、ドラコ。調子はどうだい?」
「うーん……。よくもないし、悪くはないな。相変わらずの運用結果だよ。もっと、こう、何かパッとすることでもあれば、相場も動くのだけど、今は何もないからなぁ……」
別段、入ってきた相手に驚く風でもなく、ドラコは固まったままの背中をほぐすように伸ばしつつ、のんびりとした口調で答える。

「もう、仕事は終わり?」
「ああ、君が来たから、そういうことにするよ」
そう言って机から顔を上げて、椅子を回転させると、相手は戸口の前で、予想外の大荷物を肩に担いで立っていた。

腰までありそうなショルダーバックを見て、ドラコは瞬きをする。
「それにはいったい何が入っているんだ、ザビニ?」
「いーーーもの♪」
口の端を上に上げて、ニッと意味深に笑う。

「お前のいいものって、いつだって、ロクでもないからなぁ。趣味が悪かったり、下品だったりするし……」
ドラコは眉を寄せた。

「あっ、なんだよそれ!せっかく良かれと思って、こーんな大荷物を抱えてきてやったのに、まったく!!」
プリプリと怒っても、ドラコには向かい合っている相手が、子リスがほほを膨らませているようにしか見えない。

目の前に立つ相手は、ハタチが近いというのに、とても愛らしかった。

軽くウェーブした髪は少し伸ばし気味で、肩につくほどのヘアースタイルだ。
華奢なからだつきはまだ、少年の面影を残しつつ、大きめの水分が多そうな瞳をウルウルさせて睨んでくる。
背もいくぶん低めで、声だって変声期が本当に過ぎたのかと思うほど高い声を出した。
母親が有名な女優ということもあり、美貌も申し分ない。

……ただし、それは見てくれだけだ。

性格は本当に性悪だった。

気に食わない奴が半死にするほど、度が過ぎる悪戯を仕掛けたり、自分に好意を持っている、どうでもいい相手を嗤いものにして、気持ちを弄んでみたり、気がある素振りでうまく垂らしこみ、手ひどく振るのが大好きだったりする、どうしようもない性格だ。

真面目に働こうとはせず、日々居場所を点々として、いろんなところに入り浸っているらしい。
そのひとつが、このドラコの部屋だったりもする。

ドラコとザビニは学生の頃から仲はよかったし、そのまま付き合いが続いていて、今でも腐れ縁は健在だ。

ドラコは代々続く家系の嫡子で、大きくて古いしきたりばかりの屋敷は、気が詰まる部分も多くて、まだ若い彼には時々うんざりすることがある。
その閉塞感から自分を開放してくれるのは、いつもこの悪友だった。

持ちつ持たれつで、ふたりはとても気があって、よくツルんで遊んでいた。

ドラコも若く、落ち着くのはまだまだ先で、大人が眉をしかめる悪いことや、下らないことをすることが楽しかったし、ザビニはそういうことのスペシャリストで、いつもその相棒にとドラコを誘った。

ザビニは自分が放っておくと、とことんまで突き進んでしまう自堕落さを持っていたので、そのストッパーになる、育ちのいいドラコが必要だったのかもしれない。

──ただし、それはドラコがアルコールを取りすぎていないときだけだ。

飲みすぎるとドラコも理性が無くなるので、どっちもどっちになってしまう。
ふたりはハメを外して、バカなことをするのが楽しいという、そういうお年頃だった。

それにザビニに劣らず、ドラコも見てくれは、すこぶるよかった。

彼ほど小柄ではなく、柔らかさや可愛いらしさの片鱗はどこにもなかったけれど、『魔法界イチ』と呼ばれた、母親譲りの美貌はみごとに息子へと、余すことなく遺伝している。
色の薄い輝く金髪に、アイスブルーの瞳はスッと上へと切れ上がり、優雅な身のこなしは、上流育ちの賜物だ。

そんなタイプが全くちがう極上のふたりが揃えば、人目を嫌でも引き、目立つこと、この上はない。

目立つことや悪ふざけが大好きなふたりは、顔を突き合わせると、これから始まる楽しい夜遊びの算段を、ご機嫌に話し始めた。

作品名:Crazy Party 作家名:sabure