Crazy Party
「―――で、その仰々しい袋の中身はいったい、なんだ?」
「今夜はさー、ハロウィンだろ。だったら、やっぱり仮装だよ。ぱーっと派手に仮装しよーぜ、ドラコっ!」
「仮装か……。ふーん……」
まんざらでもない顔でドラコは頷く。
ザビニは自分の持ってきたバックの重さに少しヨロヨロしながら、ファスナーを開け、中身を躊躇せず、ドラコのベッドの上にぶち撒けた。
バザハサと色とりどりのものが、中から溢れ落ちてくる。
派手なゴールドのスパンコールバック、豪華な黒セーブルのケープ、大ぶりのネックレスに、セクシーなドレス。
ハイヒールに、ロングヘアーのウィッグに、艶やかなシルクの女性用の下着。
――――女性用の下着?!!!
ドラコは一瞬言葉に詰まった。
「こ……これって、いったい。―――誰が着るんだ?もちろん、お前だけが着るんだよな?そして僕がエスコートを―――」
「ハッ、誰が!!バカなことをするのは、いつだってふたりだったじゃないか。決まっているだろ、君もするんだよ、ドラコ!」
「この僕がか?じょっ…冗談言うなよ。そんな趣味はないっ!」
「君の隠れた趣味とか、聞いているんじゃないからね、僕は。これはただの仮装だし、もちろん君も着るんだ」
「僕は君ほど小柄でもないし、可愛さのひとかけらもないから、ただの滑稽な姿になってしまうぞ」
「そーんなことは心配御無用だ。女優を親に持つこの僕を信じろよ。母親の楽屋で、哺乳瓶でミルクを飲みながら育った僕だ。君より全然ひどいツラした女が、えり抜きの美女に変身ていくのを、何度も目の前で見てきたんだ。ドラコは骨格も体つきもいいし、顔だって悪くない。メイクと衣装さえ整えれば、バッチリだ。君はすこぶる美人になる。僕が保障する」
「お前の保障なんか、知るかっ!」
ドラコはへそを曲げて、プイと横を向いてしまった。
「早くその荷物を持って出ていけ」
忌々しそうに言うのを尻目に、ザビニも余裕で食い下がる。
「いいのかなぁー。今日はすこぶる楽しいパーティーに君を誘うつもりだったのになぁ。一度だって君が行ったことがない場所だ。派手だし、イカした音楽も流れているし、酒はあるし、みんな仮装しているから、誰がどんな格好をしていても驚かないし、それに―――ちょっとヤバイ場所で、刺激的なのになぁ……」
ドラコの眉がピクリと動いた。
「刺激的?」
「そう、刺激的だ」
ここぞとばかりに、ザビニはドラコに顔を寄せて意味深に笑う。
「僕たちは今いくつだ?」
「まだティーンエイジャーだ」
ドラコの瞳がキラリと光って、ザビニと同じような表情を顔に浮かべた。
「羽目を外してバカをやってられるのも――」
「今のうちだけだ。時間は待っちゃくれないゼ、ドラコ!!」
叫ぶとザビニはドラコの肩を組み、その背中をバシバシと叩いた。
ドラコも噴出して笑う。
ご機嫌だった。
いつだって気分は上々だ。
ふざけて、バカやって、ツルむ悪友がいるだけで、人生は何倍も楽しいものだ。
若さは今しかなかった。
常識なんか、クソ食らえだ!!!
ふたりは笑ってふざけあいながら、早速ベッドの上のそれらに手を伸ばし、色鮮やかなドレスの物色を、し始めたのだった。
作品名:Crazy Party 作家名:sabure