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綾沙かへる
綾沙かへる
novelistID. 27304
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こんな休日もいいかもしれない

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 しばらく気付かなかった所為で、襟にくっきりと染みが残っていた。手を止めてカップを受け取ったキラの呟きに、クリーニング出してみろよ、と気休めを言いながらフラガは今年のクリスマスプレゼント候補にコートを付け足す。
 子供達がきちんと後片付けを始めた姿を見て、キラがコートを諦めて立ちあがる。キッチンで食器を受け取りながら、キラは楽しそうだった。ダイニングテーブルに席を移したフラガに、少年が台拭きを持って来て目の前に置いた。
 「あっちのお兄ちゃんが、拭いて下さいって。」
 子供の小さな手では一つずつしか食器が運べず、何度か往復している。それならついでに残っている大人にも仕事をしてもらおうと言う事だろうか。要領いいな、と苦笑しながらテーブルを拭いていると、インターフォンが鳴った。
 再び家主であるフラガが応対に出ると、隣家の婦人が立っていた。両手に買い物袋を下げて、その中でひとつだけ混じっていた紙袋を渡される。
 「いつも、本当にすみません。」
 そう言って頭を下げる婦人に、お気遣いなく、と返事をしていると、母親の声を聞きつけたのか少女が走って来た。
 「おかあさん!」
 そう言ってはしゃぐ子供を軽く叱ってから、母親はもうひとりの子供を呼んだ。
 「ああ、ちょっとお時間があればお願いしたい事があるんですが。」
 大まかに事情を説明して、キラの怪我の手当てを依頼すると婦人は頷いてメディカルボックスを持ってきますと言って一度自宅に戻った。
 リビングに残された少年とキラは、ソファに並んで座っていて、何処から出したのか裁縫道具がテーブルに広がっている光景にフラガは目を丸くした。
 「…あー、隣の奥さん、今来てくれるってさ…って、何やってんの、キラ?」
 渡された紙袋をダイニングテーブルに置いて、半分程中身の残っていたカップを手に取りながら聞くと、帽子、と言ってキラは顔を上げた。
 「リボン、どっか引っ掛けてたみたいで。ついでにここにも紐着けとけばもう飛んだりしないよって。ね?」
 持ち主ではなく、少年と頷きあって細かな作業を続けるキラに苦笑する。
 「…ホント、なんでも出来るようになって…」
 お兄さんは嬉しいよ、と言うと何言ってんですかと言って笑いながらキラは糸を切った。
 「はい、出来あがり。これでいいかな?」
 そう言ったキラに少年がありがとうと言っていると、またインターフォンが鳴って、隣家の婦人が顔を出した。
 人の良さそうな婦人はキラの頬の傷を見た途端に看護士の顔になるから不思議だった。ぞんざいな手当てをしてあったガーゼを取って、自宅から持参したメディカルボックスを開ける。殆ど血の止まりかけた傷を見て、この位なら縫合の必要はないでしょうと怖い事をさらりと言われたキラの顔が一瞬嫌そうに顰められた。
 「きちんと治療すれば痕も残らないし。場所が場所だけに、変な雑菌が入っていないとも限らないから、明日きちんと病院に来てくださいね。」
 男の子でも顔に傷残ったら嫌でしょうと、状況が判っているかのようにそう言って消毒をしてガーゼを当てる。手際良く作業を続ける婦人を半ば感心するように見ていたフラガは思い出したように背中も、と言った。
 「背中、打ってるみたいなんですよ。まあ、折れてはいないと思うんで一応…」
 上品そうに見えた婦人は別にいいですよ、と言うキラの背中を強引に捲り上げてあらまあ、と呟いた。
 「…本当に軍人さん?」
 婦人の疑問は尤もだとフラガは思わず吹き出して、半目で睨むキラに慌てて平静を装った。
 一番衝撃が強かったらしい所が薄く痣になっている程度で、骨の位置を確かめていた婦人は大丈夫ですよと言ってそこに湿布を貼った。
 「もしかしたら少し腫れるかもしれないけど。二、三日で引くと思います。」
 それよりもちゃんと食べなさいと言って細い身体を注意した。
 有り難うございます、と言って子供と婦人を見送ってから時計を見たキラは慌てる。
 「もう戻らないと。外出届の時間過ぎてますよッ」
 そう言って鞄を掴んだキラをフラガは背中から抱き締める。
 「…お前、今日帰るつもりだったの?」
 耳元で囁かれて、キラは言葉に詰まる。
 「…一応、規則だからって言われて。出してきたんですけど。」
 その言葉に、フラガは肩を揺らして笑う。
 「…なんてな。どうせ間に合わないだろうと思ってさっき連絡入れといた。」
 アクシデントがあって今日は戻りませんってな、と言うと、キラは諦めたように溜息を吐いた。
 「…どうせ最初っから戻れるなんて思ってませんよ。」
 ここに来る時に、きちんと夕食の材料まで買って来ているあたり、自分もどうかなとはキラも思ったけれど。取り敢えず夕食作りますよ、と言うとフラガは嬉しそうに笑う。
 この顔には弱いんだよな、と思ってキラも笑みを浮かべる。
 そうして、柔らかく口付けを交わした。


 翌日出勤したキラの顔を見て、キラを敬愛する副官がフラガの執務室に物凄い剣幕で怒鳴り込んだのは言うまでもなく。