雪の華
「上司から、ジュール隊長の指示で動けと申しつけられております。」
そう言って朝から見事なハモリを披露した二人は目の前の青年の額に青スジが浮いている事を知りつつも抱えてきた書類の束をデスクに積み上げる。
「…なんだこの紙の山は?」
分かり切ってはいても、取り敢えず確認する。
年内に処理するべき、アスランとディアッカのサインを貰うはずの書類の山。
「ザラ隊長から、ジュール隊長に頼んであるので処理していただくようにと。」
そのとき自分がどんな顔をしていたのかイザークは知らない。けれど、引き攣ったような顔をした青年二人は書類を置いて逃げるように退出して行った。
「…どう言う事だあいつら…ッ」
いくら机に当り散らしても、仕事は進まないし休暇を取ってさっさと逃げた二人も戻っては来ない。建設的な社会人なら、とにかく目の前の仕事を片付けておこうとする所だったけれど、不意に酷く楽しそうな笑みを浮かべる。
「…後悔させてやる…絶対だ。」
そうしてイザークは、自分の片付けるべき書類すら放置して、その方法を半日掛けて考え始める。
諦めたように遠くを見つめる部下たちの事など、欠片も記憶に残らなかった。
年が明けて休暇から戻ったアスランとディアッカがどんな目に遭わされたのかは、個人の名誉のために明記しないでおく。
オマケ終了