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綾沙かへる
綾沙かへる
novelistID. 27304
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作る喜び、食べる幸せ。

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 軽くそう呟いて持っていたカップを二つとも取り上げてリビングに運ぶと、もの言いたそうにしていたキラは大人しくコートを脱いでダイニングテーブルに投げた。

「誰かさんが寒い寒いって言うから。」
 そんな呟きと共に出された夕食は、チーズの香り高いクリームシチュー。器の端にはクラッカーが添えられていて、真ん中に振られたパセリの緑色が実に鮮やかだ。
「…ここはあったかいけどなあ?」
 笑いを堪えながらそう返すと、僕じゃないですよ、とキラは言う。
「おじいさんが、あなたは寒いの苦手だろうって。」
 一瞬毒気を抜かれる。そうして、盛大に吹き出してしまった。
「いーい読みしてるなぁ。」
 感心するところじゃないでしょう、とキラは言った。持っていたバターロールの籠をテーブルに置き、準備完了。
「…僭越ながら、今日はメカジキのシチューなので白ワインを合わせてみました。」
 言葉と共に差し出されたボトルに目を細める。薄く色付いた液体がグラスに注がれて行く様子に、ふとこんなことなのかと思う。
「…幸せ、だよなあ。」

 誰かと一緒に、美味しいものを食べること。
 一番簡単で、手軽に感じることが出来るのだ。