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甘えん坊症候群[シンドローム]

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「まったく…少しは限度というものがあるでしょう」


襖を後ろ手に閉めながら小十郎はため息と共に言う。敷かれた布団へと歩み寄ると足を爪立てて座り、手にした桶を枕元へと置いた。
頭の部分まで掛けられていた布団がもぞりと動き、そこから政宗が顔を出した。その頬が火照り赤く見えるのは、日の光の性だけ、ではない。
頬が赤いだけでなく、隻眼はやや霞がかり、息を吐き出す仕草は辛さが見える。それは完全に発熱している事を意味していた。


「さすがに寒さも緩んだとはいえ、まだ立春を過ぎたばかりですぞ。なのに成実と飲み比べなぞした上そのまま眠りこけるなど…少しはこちらの身にもなっていただきたい」

「…Sorry、俺が悪かったよ」


鼻先までを布団から出した格好で、政宗が小さく詫びる。言葉にいつもの覇気はなく、頭痛がするのか額に手の甲を当てて目を細めていた。
さすがの小十郎も、病人に説教をする気はない。短く息をつくと、表情を少し和らげ、言った。


「まぁ症状は軽いようですし、一日寝ていれば楽になりましょう。さ、こちらを」

「ん…」


政宗は小十郎の言葉に素直に手を退け、目を閉じる。濡らした布が置かれると、ふっと熱い吐息を漏らした。



時はもう巳の刻を過ぎた頃。日はそろそろ高い位置に行こうとしている。

実は、二人共が政宗に熱があると発覚した朝から何も口にしていない。治りも考えると、特に政宗は何か食べられるのならば口にしておいたほうがいいだろう。


「食欲はいかがです? 何か、食べられますか」

「そうだな…粥は、まだいい。できたら…果物がいいな」

「承知しました。見てまいりましょう」


立ち上がり、廊下へ向け静かに歩き出す。襖に手をかけた所で、感じていた視線へと振り返った。


「すぐ戻ります故、ご辛抱を」


そう言えば、小十郎を見ていた政宗の隻眼が和らいだのが分かった。小さく頷き、素直に布団の中へともぐりこんでいく。小十郎はそんな政宗に笑いかけると、静かに襖を閉めた。
何時もより甘えた表情を見せる政宗に愛しさを感じつつ、待たせてはならぬなと、足早に厨房へと歩を進めた。