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綾沙かへる
綾沙かへる
novelistID. 27304
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カケラ、集める日々。

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 詰まったように言葉を切って、視線を落とした。
「…アスランのこと、僕も好きだよ。好きって、たくさん種類があるから」
 難しいよね、と笑うとカガリはそうだよな、と珍しく苦笑を浮かべた。
「アスランのことも、キラのことも、同じくらい大切で、好きなんだ。だから、今はまだ壊したくない」
 多分、それが本音だ。考える時間も、選ぶ時間も、迷う時間も、たくさんあるはずなのに。
「何で、そんなに急いじゃうんだろう、ね」
 ゆっくりと、話をした。オレンジ色だった空は菫色に変わり、星が瞬き始める。
「変わることも、悪いことじゃないよ。でも、焦らなくてもいいんじゃないかな」
 だって始まったばかりだから、と言ってコンクリートの上にあったひとまわり小さな手に、自分の手のひらを重ねる。
「誰が好き、とかさ、そういうこと以前に、僕たちはもっと当たり前の双子が過ごす筈の時間を、今から始めるんだよ。生まれたときから一緒にいたら重ねた筈の、家族の時間を」
 そうでしょう、と微笑うと、彼女もそうだな、と頷いた。
「だから勘違いしてるんだと思うんだ。僕が感じていたことを、アスランが感じていたって不思議じゃなくて」
 取られたくない、なんて幼い子供のような独占欲を。互いにひとりで過ごした幼い頃の、「きょうだい」という存在に憧れた、あの頃の感情。
「…散々大人ぶってるくせに、あいつのほうがよっぽど子供みたいじゃないか」
 そう言って、軽い声で笑った。
「そうだな、今はキラが一番。それでいいだろ」
 そうやって欠片を集めるんだ、とカガリは笑う。
「作るはずだったいろんなこと、だね」
 迷って、悩んで、ケンカして、笑って。そんな他愛のない日々の欠片を、これから集めていく。
「今はそれでいいよ」
 夕陽が最後の光を残して落ちていく。
 最後の呟きはきっと、波の音に消されて届かない。





「…負けた、と思ってる、でしょ」
 結局旅行の続きを力いっぱい楽しんで戻ると、空港のロビーでぐったりした顔の親友が待ち構えていた。手を繋いだままゲートをくぐってきたところを見ているから、ゲームに負けたと思っていても不思議ではなく。
「…そうでもないさ」
 ぶっきらぼうにそう答えた親友に、思わず笑ってしまった。鋭いのか鈍いのか、本当にそうでもないのだから仕方がない。
「あのね、アスラン。何か勘違いしてたでしょ」
 女の子はショッピングが大好き、を実践したカガリの増えに増えた荷物のカートを押しながら歩くアスランは、何が、と気の抜けた相槌を打った。
「だから、僕とカガリのこと。簡単に言うとお姉ちゃんは誰にも渡さない、ってとこかな」
 たっぷり言葉の意味を考えていたらしい親友は、のろのろと視線を向けてから「は?」と呟く。
「だから、そういうこと。よくあるでしょ、小さい子がそう言ってること」
 今のところは姉弟の思い出作りに忙しいんだ、と笑うと、あからさまに親友は脱力した。
「…何がそういうこと、だ。俺がひとりでバカみたいじゃないか」
 それはそうかもね、と答えると肯定するな、と半目で睨まれた。
「じゃあゲームは引き分けだな」
 開き直ったように呟くアスランに、そうでもないかもよ、と唇を吊り上げた。
「今のところ、僕が一歩リード?」
 そう言い置いて、少し前を歩くカガリを呼び止めた。つられてカートを押すアスランが立ち止まると、それを避けてカガリの手を引き寄せて軽くキスをする。
「…ね?」
 家族はこういうキスはしないぞ、と的外れな抗議をするカガリと、陸上げされた魚のように言葉を失うアスランを見て、顔を見合わせて笑った。

「そういう反応をしてるようじゃ、カガリはあげない」
 呟きは、雑踏に消えてゆく。