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狂い咲き

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 秀吉様が亡くなられた。暑い夏の日に。

 俺がそのことを知ったのは日本に帰ってきてからだ。つい昨日のことのように思う。虎之助や市松たちと一緒に佐吉の口から聞かされた。その時、俺はあまり実感が湧かなかった。感覚が麻痺したような、胸に穴があいたような。
 けれど、それはすぐに言いようのない不安に変わったのだ。秀吉様の死を聞いた途端、やり場のない気持ちを罵声と共に佐吉にぶつける虎之助。同じく憎しみを込めて視線で殺すかのように睨みつける市松。そんな二人を見て。二人が佐吉を嫌っていることは知っているし、こんな光景は見慣れている。そして決まって、秀吉様がなだめるのだ。でも今はその秀吉様がいない。
 秀頼様を後継者に、と遺言を残されたそうだ。果たしてそれに皆が従うだろうか?
 特に、あの狸。家康が。



 その不安は現実となって更なる大きな不安を煽る。
 頬をかすめる風が少し冷たい。もう、冬が訪れようとしているのだ。

 誰一人として秀吉様の遺言を守ろうという者はいない。家康は掟を破り諸侯の縁談を次々と取り決めている。それだけでなく西の丸に入り、今や秀頼様以上に大きな顔をして居座っているのだ。諸侯も家康めが天下様だと言わんばかりの態度。秀吉様が亡くなられて一年も経っていないというのに。
 こんな冷えきった世に吐き気がしそうだ。
 ここ最近の俺はというと、何かをする気にはなれず、毎日ぶらぶらしているだけだった。外の空気を吸えば色んなしがらみから解放される気がするから。
 見上げれば高く澄んだ空――誰かさんみたいに。
作品名:狂い咲き 作家名:明治ミルク