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水谷文貴の体操16歳

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 そういうのはいいの、と聞いたら、栄口は閉じていた口を開き、いい、と言った。遠回しな拒否なのか、はたまたやさしい妥協なのかはわからなかったけど、目の前の栄口は「水谷が隣にいるだけで十分」と消え入りそうな声でつぶやき、恥ずかしくて死にたいという顔をしていた。
 もちろんそのときオレはとても感動したんだけど、信じられないことに三日後、国交断絶レベルの喧嘩を一方的に吹っ掛けてしまった。栄口と女の子が仲良さげに喋ってるのにむかついて、一方的に拗ねたのだ。
「……水谷がわかんないよ」
 オレはこのみっともないわがままを栄口にわかって欲しかったのだろうか。黙り込んでしまった栄口にまた苛ついてしまう。
「もういい」
 そんな捨て台詞を吐き、一週間くらい口をきかないでいた。ごめんってすぐに謝ればよかったのに、日が経てば経つほど卑屈さでぐるぐる巻きにされる自分がいた。栄口はもうオレのことなんてどうでもいいんだ。
 でも栄口は謝ってきたのだ。勝手にむくれたのはオレだし、勝手に拒絶したのはオレなのに。
「オレは嫌だ、こんなことでダメになっちゃうとか」
 そんなのオレも一緒だった。でも不安になる。時々大波のように被さって来る不安が、告白した日のことも、初めて手を繋いだ日のことも、大事にしておきたいものすべて遠くへ押し流してしまう。
 栄口は『隣にいればいい』と言ってくれた。けれど今もこうして隣り合ってしゃべっていても全然満たされない。多分こんなんじゃ足りないんだ。欲の深度の違いか。栄口は浅くて、オレはどこまでも深い、薄暗い。
 だからまた『そういうの』の話題を蒸し返した。できないなら普通の友達と変わらない関係だ、と好意を試すような脅迫までしてしまう。
「できないんじゃなくて」
「え?」
「わかんない……」
 そして威勢良く二択を突きつけたオレも実はよくわかっていなかった。だから二人で「スゲー」だの「こんなのできんの?」とか言いながら、おっかなびっくり調べるはめになった。
 オレらはどちらとも「相手がそう望むなら……」と思っていたらしく、いざどっちが、という段階で微妙にぎこちなくなった。背も体重も上だしお前がすればと栄口は言う。オレも栄口をぐちゃぐちゃのどろどろにしてみたい。
 でも、その逆のほうが自分の中でいろいろ納得できそうな気がした。オレはいつもいつも欲しがってばかりだから不安になるんじゃないだろうか。だから求められたかった。栄口から「欲しい」とか「やらせて」とか言われてみたい。 
「無理?」
 そう聞いたら栄口は渋い顔で「無理なわけない」と少し怒った。つまりはできるってことでいいのかな。

作品名:水谷文貴の体操16歳 作家名:さはら