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353訓~360訓ネタバレ銀桂小話集

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言わないけれど



窓の外には宇宙が広がり、そして、地球が見える。
今、坂本が率いている快援隊の船の中にいる。
地球には不気味な雲がかかっていて、その雲から降る雨に濡れると人間は仮面のような表情になりプラカードでしかしゃべれなくなってしまう。
幻の傭兵部族である蓮蓬が、大戦のせいで失った母星の代わりとして、地球を手に入れようとしているのだ。
あの雲に覆いつくされたとき、地球は蓮蓬の手に堕ちる。
銀時たちは雨が降り出すまえに坂本の船で地球を離れたから、発症をまぬがれた。
だから、坂本に助けられたと言える。
けれども、蓮蓬を地球につれこんだのは坂本なので、坂本が動いて当然だった。

「つーかさァ、なんか、やたらとスケールのでけェ話になってねーか」
銀時は窓の外をじっと見ている桂の隣まで行くと、いつもと変わらない口調で話しかけた。
「宇宙を股にかけて、地球を護る、なんてさァ」
ボリボリと首筋をかいた。
一方、桂は眼を窓の外に向けたままでいる。
「そうだな」
落ち着いた声。
反論はしてこない。
とりあえず相づちを打っただけ、みたいな。
そう銀時は感じた。
桂の気持ちは窓の外に行っている。
正確には、侵略の危機にさらされている地球に、そして、エリザベスに、だ。
「……ヤツのこと、信じてるのか」
「あたりまえだ」
銀時の問いに、桂は即答した。さっきとは違う、強い意志の宿る声だ。
その顔は銀時に向けられている。
「エリザベスは俺の友なのだからな」
凜とした眼差しで銀時を見すえ、きっぱりと告げた。
心の底からそう思っているのが伝わってくる。
銀時は少し笑った。

たまに、本当にコイツはすごいと思う。
これまで信じていた相手に裏切られたことが何度もあるくせに、また信じてる。

バカだ。
けれど。
そういうところが。

手を伸ばし、その身体に触れる。
そうしたいと思うままに動く。
「銀時」
桂が眼を見張っている。
その顔はもう間近にある。
その口をふさぐ。
少しして、離れた。
「……だれかに見られたらどうするんだ」
桂が文句を言った。
だが、銀時は平然としている。
「見られなかったんだから、別にいーだろ」
「結果としては、だろうが」
「それに、俺ァ、見られてもかまわねーよ。俺たちのこと、新八と神楽は知ってるし、あの毛玉も知ってるしなァ」
「そういう問題か?」
「そーゆー問題だ」
「だいたい脈絡がない」
「脈絡はある」
「どこに」
「さァてね」
銀時はニヤリと笑った。
そして、踵を返し、歩きだす。

エリザベスが桂を裏切るようなことはしないだろうと思う。
しかし、絶対に、とは言い切れない。
自分の同胞のことを思えば、地球を侵略する側につくだろう。
そうなったときに桂はどう感じるだろうか。
しかたない。
そう思うのだろうか。
だが、それでも、やはり、寂しいだろう。

もしも信じていた相手に裏切られたら。
つらい思いをしたならば。

思い出してほしい。

自分は決して裏切らないから。

寄りかかってくれていい。
むしろ、そうしてくれたら嬉しい。

そんなことは、言わないけれど。