ノースキャロライナ
まだ熱の残る頭をふらふらさせながらドアの前までたどりついたら、水谷はもう一度栄口の姿を見た。こちらへ背を向けているから少し気が楽だった。
「なぁなぁ」
「なんだよ」
「オレさぁ、栄口にメールしてもいい?」
「え?」
「電話もしてもいい?」
「水谷わけわかんないんだけど」
「オレも」
今まで当たり前にしていたことに、この期に及んでなぜ許可を求めるのか水谷にもわからなかった。けれど今、確認が必要に思えたのだ。
「なんかオレ、栄口といろんなことしたくなってきた」
「えええ……」
「そういう意味ではなく!」
後ろ頭からでも微妙に引いたのが伝わってきて、水谷は慌てて否定した。さすがにそのへんまでは想像していなかった。
今の気持ちをうまく言い表せるか自信がなかったが、次々に胸へと湧いてくる感情を栄口に知ってもらいたくて仕方ない。
「もっといっぱいしゃべったり、もっといっぱい笑ったりしたい。すげーしたい!」
「勝手にしろよ、もう……」
栄口がその肩をすくめたのを確かめ、あららと口元を緩めながらながら水谷は部室へと入った。