【Secretシリーズ 2】Truth -真実-
〜プロローグ〜
朝の光の中で目が覚めた。
ひどい頭痛がする。
頭が割れそうなほどの痛みに低くうめいた。
「──つぅ……」
その声に、彼の横で何かが動いた。
見ると誰かが自分のとなりで寝ているのだ。
ドラコは今まで、誰ともベッドを共にしたことなど、一度もなかった。
潔癖で、神経質すぎる彼は、誰かが横にいたら眠れなかったからだ。
しかし、今、自分はぐっすりと眠り、目覚めたばかりだったようだった。
──何もかもが信じられない。
しかもこの自分のとなりにいる黒髪の癖毛は、ひどく見覚えがある。
とてもイヤな思い出だ。
「――ああ、起きたんだ。おはよう、ドラコ。昨晩から熱が下がらなくて、本当に心配したよ」
身動きして起き上がった相手はニッコリと笑い、親しげにドラコのほほを触ろうとする。
途端に、それを容赦なく振り払った。
「――――えっ?!」
一瞬彼の動きがとまる。
「なぜ貴様がここにいるんだ。ハリー・ポッター!!」
その言葉にハリーはひどくショックを受けたような顔になり、みるみる表情が曇った。
うつむき、唇をかみ、今にも泣き出すのではないかと思われるほど、落ち込んだ顔になる。
肩が不自然なほど、小刻みに震えていた。
ハリーの肩の震えはほんの少しで収まり、やがて深くため息をついて、再びドラコを見た。
そこにはいつも見慣れた、憎らしい不適な笑みを浮かべたライバルがいた。
緑の瞳は深くて、何の感情も読み取れない。
ゆっくりとハリーはドラコの前に、右手を差し出す。
「ようこそ、マルフォイ。僕たちの隠れ家へ」
ハリーらしい挨拶だ。
ドラコはまた、その差し出された手を容赦なく振り払い、にらみつけた。
――――少しの皮肉に込められた、ハリーの本当の心をドラコは知らない。
作品名:【Secretシリーズ 2】Truth -真実- 作家名:sabure