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【Secretシリーズ 2】Truth -真実-

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第1章 夢のあと



ハーマイオニーは計画の全てを、包み隠さずドラコに説明した。

「――ふん、そういう訳なんだ」
聞き終えると、はき捨てるように、ドラコは言った。

大広間と彼らが呼んでいる、リビングルームの壁に寄りかかって、相手をにらみつける。

「まさか、そんな汚い手を思いつくなんて、さすがは汚れた血だよ、ミスグレンジャー」
辛らつな言葉に、ハーマイオニーは黙り込んだ。

勢い込んで、ロンが怒鳴る。
「君は言っていいことと、悪いことの区別もできないのか、マルフォイ!ハーマイオニーは女の子なんだ。おまえはなんて、失礼なヤツだっ!!」
涙ぐんでいる彼女の前に立ちはだかった。

「今度は優しいナイトの登場かい」
フンとバカにして、鼻を鳴らす。

誰もが、目の前にいるドラコに戸惑っていた。
昨日までの、彼の面影はどこにもなかった。
本当に煙のように消えうせている。

この容赦ない毒舌。
上からものをいう態度。
見下した目つき。
これこそが、いつもの見慣れた、ドラコだということに、やっとここにいる全員が気づいた。

昨日までのドラコこそ、本当ではなかったことに──

自然とみんなは、もう一人の相手のほうを見た。
ハリーは空いた椅子に座り、足を組んで、じっとドラコのことを見ている。
そこには何の感情も浮かんではいなかった。
まるでハリーの中からも、ドラコの記憶をなくしてしまったような無表情さに、みんなは愕然とする。

昨日までふたりは、いつも行動を共にして、あんなに楽しそうに笑いあっていたのに。
片時も離れず、見つめあい、幸せそうだった。
それが記憶のすり替えでも、あのドラコを見るハリーの瞳は、本当に喜びに満ちていた。

ドラコはひどくわがままで、気まぐれで、そして甘えてばかりいた。
ムリなことを言っては、ハリーを困らせた。
だがハリーは笑いながら、それを全て許していた。

「なにもそこまですることない」と仲間が止めようとしても、「いいんだ」と笑って、彼の世話をした。
もう誰も、このふたりに意見するものなどいない。
ただ、この幸せが出来るだけ長く続くことを願っていた。


――――だって、みんなハリーのことが大好きだったからだ。


この少年はいつも、まわりから過大な期待をかけられて、大きな苦難ばかりを背負っていた。
歯を食いしばり、泣き言ひとつも言わずに、大きな敵に向かっていく。
その恐怖も苦痛も、すべてそのからだで受け止めた。
肉親は殺され、心許した大人も死んだ。
彼には何も残っていなかった。
それでもハリーは何度も立ち上がり、相手に向かっていく。
彼の人生は苦痛と苦難と、意味のない絶賛ばかりだ。

誰かがこの彼を救って、幸せにして欲しかった。
だれでもよかった。

ハリーが笑い、相手が笑い返してくれるのだったら、それが敵対しているドラコでも、記憶がすり替わった偽者でも、よかったのだ。

あんなにも幸せな満ち足りた顔で、ハリーが笑うのだったら──


ドラコが隠れ家にやってきて一ヶ月が過ぎた頃、ロンは納得がいかない顔で腕を組み、ハリーに尋ねた。
「どうして、マルフォイなんかと?君なら相手は選び放題のはずなのに」
ハリーは笑って、答えた。
「ワケなんかないよ。ただ好きなんだ」

彼の顔が嬉しそうに、──本当に嬉しそうに緩む。

「まるで、夢のようだよ。ドラコが僕のほうを見て笑ってくれるなんて。それだけで、こんなにも幸せになるなんて」
「――――けど、マルフォイは……」
「うん、わかっているさ。ニセモノだろ?いいんだ、別に。なんでもいいんだ。最初から覚悟はできている」
ハリーは自分に言い聞かせるようにポツリと言った。



今がそのときだった。
魔法は全て消え失せたのだ。

そのあまりの落差に、部屋は物音ひとつしない。

突然、ハリーが椅子から立ち上がった。
つかつかとドラコの前に立ち、腕を引っ張る。
「君は頭がとても痛いんだろ?多分、耐えられないくらい痛いはずだ。もう休んだほうがいい。これ以上立っていたら、気絶してしまうから」
「放せ!」
うっとおしそうに、ハリーの腕を振り払う。

「えっ、そうなの?」
ネビルが尋ねると、ドラコより先にハリーが頷いた。
「そんなことはないっ!」
ドラコは鋭く否定する。
──が誰もドラコ自身の言うことより、ハリーの言葉を信じた。

「大変だわ。風邪がやっと治ったばかりですものね。深夜まで高熱でうなされていたから、まだ体調が本当じゃないのに、無理をさせてごめんなさい」
心配そうに、ハーマイオニーが駆け寄ってくる。
さっきあんなにもひどいことを言われたのに、気にする風でもなく、ドラコの体調を自分のことのように気遣っていた。
まわりの仲間も口々に、ドラコの体を心配している。

ドラコはひどく戸惑った顔になった。
敵である自分をこんなに心配されるなんて、意味が分からないからだ。

「――――さあ、ハリー。ドラコを部屋へ連れて帰ってちょうだい。お薬は後から届けるわ。いつものように。薬のあとの、甘いチョコレートも必要かしら?」
「いったい何のことだっ!?」
ドラコの顔が真っ赤になった。

「無理をしちゃだめよ、ドラコ。あなたは特に、からだを崩しやすいみたいだから。一度体調を悪くなると、長引くのよ。気をつけて」
彼はショックのあまり、口が利けない。

(なぜ、そんなことまでこいつらは知っているんだ?!なぜ、家族しか知らない、プライベートなことまで……)
世界がゆがみ、クラリと意識が混濁する。

ひどい頭痛と、寒気がした。
フラフラとからだが前後に揺れる。

気を失う寸前、ドラコは誰かに抱きとめられた。

その腕の感触は暖かくて、ひどく心地いいものだった…………