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遠くの花火、近くの残響

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 教えたけれど何度やってもできないようなので、結局三面のボスは栄口が倒してしまった。
「すごい! どうやったの今!」
「だから撃って逃げるの繰り返し」
「うわー、なんでだ、オレのと動きがぜんぜん違う」
「水谷さぁ、こんな超簡単なとこで詰まってたらラスボス絶対無理……」
 言い切らないうちに隣に座っていた水谷が身体を傾け、乱暴に覆い被さってきた。多分うるさいオレの口を塞ぐつもりなんだろうな、と栄口は思っていたが、水谷の頭は予想より少し下の位置にあった。
「えっ、ちょっ……と」
 栄口の首にあるなだらかな山を水谷の舌が這う。押し当てられると少し苦しいし、急に舐められたから驚いてしまった。
「みっ、水谷?」
 齧り付くような動作に押し切られるかたちで首を仰け反ったら、その隙間を狙い、角度を変えて唇が吸い付いた。水谷の生暖かい唇が薄い皮膚をゆらゆらと濡らす。
「ここ声響く、おもしろい」
「喉仏?」
「栄口の喉仏ってえろい」
 そう喋る水谷の声も皮膚へ振動して伝わってくる。うわぁ、なんか変な感じだ。ごくりと栄口が唾を飲み込むと、動きに倣って舌も動き、与えられるぬるりした感触に身体がぞわぞわしてくる。
 直接的にいやらしいことをされたわけじゃないのに、どうしてだろう、だんだんひとつのことへ意識が集まってくるのを感じた。水谷はどうなのだろう。最初からそのつもりで喉を舐めたのだろうか。
「栄口」
「ん?」
「ベッド行こ?」
 喉元で甘く言われた言葉が気管に震え、瞬時に耳へどくりと溶けた。不思議だ、キスする距離よりも音がすぐ届く。
 水谷ってこんないい声してたっけ。首で停止している水谷の茶色い頭を見ながら栄口は思う。全部投げ出してもいいような、そんな気持ちにさせてくれるような声だった。
「いいよ」
 と、すんなり言ってしまったのが自分でも信じられないし、相手もそうなのだろう。水谷はベッドへは行かず、すぐさま栄口を床へ押し倒した。
作品名:遠くの花火、近くの残響 作家名:さはら