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堕落者4

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 彼の能力をやっと理解できた時、私は、自分がとても間抜けに思えた。ここに来てからずっと、真の絶望を恐れていた私は、現金にも安心してしまったのだ。私はまだ絶望とやらをしているべきだったのかもしれないが、彼の能力の程を知ってしまった以上、そんな可笑しな感情は今の私に無い。
 先ほどの横断歩道を思い返す。あの時の私は、車にでも轢かれればいいと考えてしまっていたぐらい、正気ではなかった。そしてあの時の私は、車がどうして動かされているのか考えられなかった程、馬鹿だった。こうしてソファに腰を落ち着かせていれば、先ほど眺めた夜景の、一つ一つの明かりの下に人々が居るのを、いとも容易く想像できるのに。
 本当にここは、紛う事無く一つの世界だった。人がいて、建物があって、学校までもがあって、社会の成り立った一つの世界だった。人々は自分たちの作り出した社会の中で生きているようだった。信じられないことだが、間違いなく、今、私はその中の一員でしかない。
「鈴」
 彼は出会い始めの頃から私の役に立ちたいと言ってくれていて、今の今までちゃんと言うことを聞いてくれていたし、先ほどからも私を気にかけて、気遣ってくれているようだ。私の感情を読み取るのだって、そのためだと思える。
 私にはもう家族はいない。私にはもう以前の友達はいない。けれど私はここにいる。望まれた訳でなく、誰に頼まれた訳でもなく、隣の化け物の所為だとしても、ここにいる。望みは今のところ見つからないが、私が少なくとも死を馬鹿に出来るのなら、誰にも頼まれなくったって、ここで生きてみてもいい。
「これからどうしようか」
作品名:堕落者4 作家名:直美