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ふざけんなぁ!! 8

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なんでもチャレンジというけれど(涙) 後編1




涙を堪え、帝人がもじもじ恥らいつつ【ひょっこりひょうたん島】を歌い上げた後。
ダンダンダンダンダン♪♪
そんな軽快なリズムを鳴らし、大きなTV画面にでかでかと数字が浮かび上がる。


『ただ今の点数は、55点♪』


羞恥に震えながら歌った場合、実力が出せなくなるという事を、身を持って証明した帝人は、クッション程大きさのある、ふわふわ巨大帽子で胸を隠しつつ、脱兎で着替える為に部屋の最後尾にある更衣スペースに駆け込むつもりだった。

なのに遊馬崎ウォーカーが、糸目でにやにやしながら、帝人の細い腕を引っつかみやがる。

「いやぁ、駄目でしょ帝人ちゃん。次の抽選まで、このままに決まってるじゃないですかぁ♪」
「ふ、ふざんけんなぁ!! 何時、誰がそんなルールを決めたんですかぁぁぁ!!」
「私達♪ 司会者の言う事は絶対なの♪」
「そうそう、二次元は正義っす」
「この大会、私が発起人ですよね!?」
「みかぷー、残念だけど、日本は民主主義な国なのよ。多数決取ったって、2対1でみかぷーの負けでしょ?」
「人間、諦めが肝心っす」

ハイタッチしながらにんまりチシャ猫笑いを浮かべる奴らに、ボールペンが今手元にあったらブッ刺したい。

「ふぅぅぅぅぅ!!」

帝人は羞恥に耐えられなくなった。
目を潤ませ、喉をひくひくさせつつ嗚咽を耐え、まっしぐらに舞台から降りて突っ走る。
行き先は勿論バーテン男の元だ。
酒に酔ってもいない癖に、ほんのり顔を赤らめつつ、鼻の上におしぼりを宛ててソファーに座る静雄の胸に、帝人はポスンと勢い良く飛び込んだ。

「静雄さんの、体で私を隠してください!!」

一気に茹蛸のように真っ赤になり固まった彼に構わず、男の人は足を開いて座るからどっちにしようか迷ったけど、とりあえず右足の太ももにちょこんと腰を降ろし、ぎゅむっと背中に手を回しつつ、胸に押し当てるように顔を埋めた。

帝人自身もぴるぴる体を震わせていたが、静雄も何故かがたがたに震え始めている。

「……トムさん、俺……、もう……」
「静雄、帝人ちゃんはまだ子供だ。15歳に手を出したら犯罪だ」
「……死にそぉっす。生殺しっす……」
「愛があるなら耐えられる筈だ。それとも、お前の彼女を想う気持ちは、そんなに軽かったのか?」
「……うううううううう……」

帝人の頭の上で交わされている男達二人が意味深な会話に、羞恥心すらふっとばす、身の危険を感じた。

(トムさん、もしかしなくても、今私とってもやばい?)
静雄にばれないよう、目だけでちろりと見上げると、ドレッド・ヘアの男は、やっぱり部下に気がつかれないように、こくりと頷いた。

静雄は【我慢】をやめた人間で、只でさえ沸点が低い。ぶち切れた後は、人目なんか一切気にせず押し倒しそうだ。

「ほらほら、帝人ちゃんも……、串カツ好きかい?」

だらだら冷や汗をかいていたら、トムがすかさず笑顔で、食べやすい揚げ物を口元まで差し出してくれた。
「はい、あーん♪」
これって餌付け?
そういえば静雄は動物番組が大好きだし、擬似で小動物に餌をやるような、ほのぼのなシチュエーションを作ってくれたようだ。
(ありがとうトムさぁぁぁぁん!!)

慌てて涙を拭い、可愛くぱくりと頬張った。
もっきゅもっきゅと咀嚼してこくりと飲み込むと、口元を緩め、にっぱり無邪気な笑みを作る。

「とっても美味しいです、トムさ……」
「全然駄目っすトムさん。帝人は脂っこい揚げ物なんて、あんま好きじゃねぇっす!!」

静雄は上司の手から、串を払いのけると、テーブルにあったありったけの味噌ダレの焼き鳥五本を、左手で鷲づかみした。
流石トムさんは早かった。
逃げ遅れて、怪力な部下に手を引っ叩かれて骨折する心配は無い。


「ほら食え」
ずいっと一串、口元に差し出される。
口はへの字に引き結ばれ、むっすり機嫌も急降下している。
どうやら焼餅を焼いたらしい。
弁償やクリーニング代が怖いから、白いスクール水着を汚したくない。
正直味噌ダレが滴り落ちるのがひやひやだったが、今の静雄に『一人で食べられます』などと言うのは自殺行為に等しいし。

帝人は素直に口をあけて、先端部分にぱくりと喰らいついた。
もっきゅもっきゅと咀嚼していると、彼は帝人の食べかけた串の残り肉を全部、遠慮なく自分の口に放り込む。

判り易い男だ。
自然な流れで間接キスできたと思っているらしく、みるみる蕩ける顔に戻っている。
帝人も思わずくすりと笑みを零した。

「旨いか?」
「はい、ありがとうございます。静雄さん大好き♪」
「そっか、もっと食え♪ どんどん食え♪」

新たに差し出された焼き鳥一串を、にこにこ先端部分だけぱくりと喰らいつくと、静雄がすかさず残り全部を頬張ってしまう。
どうしてこんなにも、純朴で可愛い成人男が存在するのだろう?
債権回収行のボディーガードという、ちょっと特殊なチンピラ家業に足を突っ込んでいる癖に、ピュアピュアに成長してしまった彼が、たまに眩しく思える。


そんな静雄の餌付け独占欲を確認し終え、トムはとても良い笑顔で頷いて。
「おおっと、そろそろ俺も籤引いて着替えタイムだ。じゃあな帝人ちゃん♪ 沢山仲良く食えよ♪♪ 静雄、お前は俺の次の次だから。俺の後、向こうチームの奴が着替えから出てきたら、ちゃんとお前も抽選箱から籤引いて衣装を変えに行けよ。一時間で最低6曲はこなさねーとさ、三時間あっても時間足りなくなるべ」
「うすっ」

という事は、一人当たり10分。長い歌もあるし採点時間もいるから、歌だけで結構ぎりぎりっぽい。
流石社会人、時間配分を気にしてくれるなんて流石だ。
着るのに難しそうな服だって大量にあるし、悠長に一人一人の着替えを待って、それから闇鍋状態で歌っていたら、余裕で15分から20分、平気でかかってしまうだろう。

その頃丁度、更衣室のカーテンが勢い良く開き、二番手の渡草三郎が、長い金髪ツインのカツラつけ、腕にシャーロックホームズみたいな服装をした顔のでかい犬のぬいぐるみを抱え、真っ赤なヘッドドレス風の帽子を被り、何段も重ねられた同色のドレスを両手でたくし上げ、のっしのっしとステージに向かって大股で歩いてきた。
気合が入っているのは判るけど、あまりにも激しく動くので、中に穿いている真っ白なドロワーズ(女性がドレスの下に穿く、真っ白いズボンのようなレースひらひら下着。主に18世紀に愛用された)が丸見えだ。

「【真紅】来たぁぁぁぁぁぁ♪」
「【くんく】もいるぅぅぅぅぅ♪ きゃぁぁぁぁ、【アリプロ】よぉぉぉぉ♪」

狂喜乱舞する、司会強奪犯の二人の狂態を見て、帝人はこっくり小首を傾げ、静雄を仰ぎ見た。

「あれは何のキャラなんでしょう?」
「さぁな。俺が判るのはジャンプアニメぐらいだからな。ほら、もっと食え」

かつて自由民主党の最後の首相まで大ファンだったという、ゴスロリ人形達がナンバーワン目指して戦いを繰り広げる有名アニメ【ローゼンメイデン】。その主役【真紅】と彼女が大切にしている犬のぬいぐるみ【くんく】の事を、ここ三年TVを殆ど見なかった帝人は知らなかった。

そして多分渡草も、この作品を全く知らなかったのだろう。
作品名:ふざけんなぁ!! 8 作家名:みかる