二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

ふざけんなぁ!! 8

INDEX|2ページ/11ページ|

次のページ前のページ
 

自分が引き当てた【ローゼンメイデン】のオープニング曲、【聖少女領域】を、初っ端からカラオケのガイド機能を使い、本来の歌手である【ALI PROJECT】の女性ボーカルに歌わせ、己もマイクを手に必死になってガイドボーカルを追いかけたのだが、曲はあまりにも難しかった。

なんせ音の乱高下が目まぐるしい上、伴奏と不思議で不気味な歌の主旋律が全然合ってない。
だからこそ、ゴシックロマン風な美しくも不気味な音楽が完成されているのだろうが、あんなのいくらガイド機能がついていたって、初見で歌える訳がない。
予想通り、溢れる不思議な音に翻弄された渡草三郎は、あえなく轟沈した。

『ただ今の点数は、23点♪』
「ふざけんなぁぁぁぁぁ、このクソ機械!! 俺にルリちゃん歌わせろぉぉぉぉぉ!! リベンジさせろぉぉぉぉ!! ルリちゃんだったら完璧だぁぁぁぁ!!」
「渡草さんブレイクっす!!」
「カラオケのTV壊したら、チケット所じゃなくなるのよ!! まだ一曲目じゃない。30点差なんて、十分私とゆまっちで挽回できるんだからぁぁぁ!!」

真っ赤なドレス姿の男の目尻には、涙が溢れていた。
敵チームとはいえ、一生懸命全力で頑張ったのに、無残な点数に敗れた彼を、帝人も心の底から同情した。
聖辺ルリのオンステージがかかっていたからって、泣くほど悔しがるなんて。
こんなルール、悪乗りして考えなきゃ良かったかもしれない。

「帝人、お前が落ち込んだってしょうがねぇだろ。所詮ゲームだし、渡草だって景品欲しけりゃ勝手に今から頑張りゃ良いし、駄目なら後一ヶ月以上あんだから、てめぇ自身でチケットを何とかすりゃいいだけだろが。其処までお前が心配してやんなくていいんだ。人に気ぃばっか使ってると身がもたねぇぞ、このお人好しが」
まさか静雄に諭されるなんて思ってもみなくて、帝人自身がびっくりだった。
でも、顔に出してないつもりだったのに、よくしょんぼりしてたことに、気がついてくれた。
静雄の動物的勘、侮りがたし。

「ほら。次は何食うんだ? 取ってやる」
「うー、うー、あ、たこ焼き美味しそうです」
「よし」

静雄は甲斐甲斐しく、帝人の口の端についていた味噌ダレを、新しいお絞りでこしこし拭うと、楊枝にたこ焼きをひとつぶっ刺し、自分が先に一口小さく齧った。

「……中、あんま熱くねぇ。冷凍もんだなこりゃ……。よし、食っていいぞ」
「……えっと……?」
ずずいと、食べかけの半欠片を差し出されても。
今度は帝人の方が、間接キスしろという事なのだろうか?

「ああ、お前の舌、火傷さしちまったら俺が嫌だったからな。しってっか? たこ焼きが京風で作られてた場合、外側が温い位冷めててもさ、中に入ってるダシが熱々な上、生地もとろっとろで、口に入れてかみ締めた瞬間、じゅーってなっちまう事あるんだ」

きっと昔、自分が体験したんだろうなぁ。
そう思うと、気遣いも嬉しいが、何だか微笑ましくて。
帝人はにこにこしながら、静雄が差し出してきた楊枝にぱくりと喰らいついた。

独特の甘いソースと鰹節、それからマヨネーズと青海苔が良い塩梅だが、『静雄の不器用な優しさ』という隠し味がとても良く効いていて。
「……えへへ、凄く美味しいです。きっと、静雄さんと一緒に食べると、どんな物でも幸せな味に変わっちゃうんですねぇ♪……」

心から素直に出てきた言葉を耳にした彼は、またもや茹蛸のように顔を真っ赤に染めてしまった。


☆★☆★☆


デジカメであちらこちらを激写していた黒バイクが、カメラをじっと覗き込んでいる。
彼女はとっくに猫耳ヘルメットを脱ぎ捨てているから、首から上が全然無いのに、一体どの部分で見ているのだろう。

門田はセルティを不思議そうに眺めつつ、生ビールをぐいっと煽った。
今日、いつも彼の周りに集まっている三人は、初っ端からテンション高く、異様な雰囲気を醸し出していて、仲間に混ざるのが辛すぎた。
かといって、静雄が幸せに顔を崩し、竜ヶ峰をお膝抱っこで餌付けしている最中を邪魔すれば、きっと自分の命日が今日になる。

よって、学生時代も全く交流が無かった新羅の横で、ちびちび酒をかっ喰らう羽目になったのだが、横にいる闇医者が、急に心配げにこくりと小首を傾げた。

「ねぇどうしたのセルティ。そんなにしょんぼりして、何かあった?」
「は?」

新羅の言葉に、門田は更に目を丸くした。

「お前凄いな、判るのか?」
「当たり前だよ。愛しい人の感情の機微も判らず、何がパートナーだ。私は彼女を愛してる。彼女だけを愛してるんだ。セルティ激ラブ♪♪ ぐへっ、うおっ!!」

黒バイクから鳩尾に激しい手刀の突きを喰らい、身を二つに折って身悶える羽目になっても、新羅の顔は笑っていた。
こいつ、実はドMか?

彼女は高速でPDAに文字を入力すると、門田の面前にびしっと突きつけてくるし。
『静雄のとても良い表情の写真が撮れたのだが、プログに載せられそうになくて残念だ』

続けて差し出されたデジカメ画面を、覗き見ると。

でろでろに蕩けた顔したバーテン男が、お膝にちんまり白いスクール水着少女を乗せ、つま楊枝に刺したたこ焼きを頬張らせていて。
いつの間にか復活した闇医者が、門田の横から覗き込み、うんうんと大仰に首を大きく振った。

「そうだね、やめた方がいい。臨也の妨害が無くたって、きっと閲覧者が『幼児にイタズラしてる』と勘違いして、静雄が警察に通報される」

『そういえば、今度赤組は誰が抽選箱引くんだ? 白組は今、田中氏が着替えているぞ?』
「あ、俺だ。悪い、ゆっくりしてたら時間なくなっちまうもんな」

その時丁度カーテンが勢い良く開き、ドレッドヘアの巨大メーテルが、あの暑苦しい黒装束…真っ黒なもふもふ帽子と、同素材のケープとロングドレスを身に纏い、ブーツの踵を甲高く鳴らしつつ、のっしのっしと舞台に向かって歩いてきた。

夏なのに、イミテーションだろうが毛皮なんて惨ぇ。しかも女装。
だが惨ぇが、渡草の真っ赤なゴスロリ人形コスプレより、全然マシか。

狩沢が早速、カラオケ機械に番号を入力する。
予約トップに並んだのは、日本人なら殆どが知っているだろう、有名アニメ映画の主題歌だった。
「いやぁぁぁぁ、【ゴダイゴ】の【銀河鉄道999】がきちゃったよぉぉぉ!!」
「ヤバイ、ヤバイっすよ狩沢さん!!」
「おう、これ、実は俺の持ち歌なんだよなぁ♪ ラッキー♪」
「「「うえぇぇぇぇぇぇぇ!!」」」

渡草、遊馬崎、狩沢の鼓膜に突き刺さるような悲鳴の中、自信たっぷり舞台に上がる田中トムの姿は凛々しかった。
そして宣言した通り、マイクの通りも良く、声質もキィの高さもばっちり合ってて、メッチャ歌が上手い。

「ちょっと、どうしようドタチン、あれ絶対高得点出ちゃう!!」
「門田さん、ここは一つがつんと行ってください!!」

駆け寄ってきた二人の鬼気迫る顔に腰が引けそうになったが、門田はビールジョッキをテーブルに置くと、いつの間にか担当になったらしい……、セルティが差し出してきた紫の大きな箱に、片手を突っ込んでカプセルを一個抜き出す。

それを険しい表情になった渡草が引っ掴み、中から取り出した紙を読み上げた。
作品名:ふざけんなぁ!! 8 作家名:みかる