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花いちもんめ

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勝って嬉しい花いちもんめ
負けて悔しい花いちもんめ
あの子がほしい
あの子じゃわからん
相談しよう
そうしよう

「くっだらねー遊びだなァ」
「銀ちゃんは、花いちもんめ、したことないアルか」
「するワケねーだろ」
「まあ、たしかに、銀さんがあの遊びをしているところを想像できませんね」

なんでそんなたわいのない会話を思い出したのか、わからない。
今ここに新八も神楽もいない。
置いてきた。
向かう先があまりにも危険で。
それでもついてこようとしたから、怒鳴りつけ、それでも引き下がらなかったから、殴った。

あのとき殴った手が痛い。

さすがにもう終わりだろう。
自分たちの関係は。
もうもどれない。

終わらせるのは、断ち切ってしまうのは、本当は一瞬でできることなのだ。

目的地に到着する。
「よォ」
にやりと軽く笑って声をかけると、この場にいる者たちは笑顔を返すどころか殺気を漂わせた。
強くて、凶暴で、残虐な、外道どもだ。
地獄に堕ちればいい。
いや、この手で突き落としてやる。
正義ではない。
ただ自分がそうしたいだけだ。
こいつらを斬る自分も外道なのだから。

笑う。
凶悪に。

もしも新八と神楽がついてきていたなら、今の自分を見て、そして、これから自分のすることを見て、離れていっただろう。
コイツら相手に手加減はできそうにない。
斬って斬って斬りまくる。
夜叉となった姿を見たならば、どうせ離れていっただろう。

どうせ離れていくのなら最初から関わりを持たなければ良かった。

もとから自分は外道だったのだ。
幼い頃からすでに外道だった。
鬼の子と呼ばれていた。
人の流す血を見ても、死体を見ても、心は痛まなかった。
自分に人の心はなかった。
人を斬ってなにが悪いのか。
善悪なんか、知らない、どうでもいいものだった。

そんな自分を松陽は拾って育ててくれた。

花いちもんめ
あの子がほしい

松陽は自宅で塾を主宰していて、その庭で幼い塾生たちが遊んでいた。
自分はそれには加わらなかった。
声をかけられなかったし、声をかけなかった。
くだらないと思っていたから。

どうせ離れていくのなら最初から関わりを持たなければいい。

期待なんかしないほうがいい。

どうしてこんなくだらないことを思い出したのか。
外道どもをまえにして。
「なんだ、てめえ」
殺気をまき散らしながら近づいてくる。
それを見て、また、笑う。
恐れはまったくない。
むしろ血がわきったっている。
自分も外道だ。
その事実と対面する。
もう、もどれない。
もどれなくてもいい。
どうせ自分は外道に生まれついているのだから。

刀をかまえ、夜叉となる。

だが、あの思い出には続きがあった。

「銀時が、ほしい……!」
遊んでいた塾生たちとは少し離れたところでひとりでいたとき、背後からそう怒鳴る声がした。
呼ばれたのは明らかに自分の名で。
だから驚いた。
振り返った。
そこにいたのは、良い身なりの整った顔立ちの少年だった。
塾生のひとりであることは知っていたが、名前までは知らなかった。興味がなかった。関わる気がまるでなかったから。
その少年は堅い表情で、一歩、距離を詰めてきた。
そして、その手を差しだしてきた。
けれども、自分はその手をただじっと見ていた。
どうしたらいいのかわからなかった。
すると、その少年はじれったそうな表情になった。
「ほら、行くぞ!」
そう一方的に告げて、少年は差しだした手をさらに近づけてきた。
手をつかまれた。
自分のものとは違う体温を感じた。
直後、引っ張られた。
それに逆らうことはできた。
しかし、なぜか、あのとき、そうする気が起きなかった。
少年に手を引っ張られて歩いていた。
手をつないで歩いていた。

「助太刀しよう」
背後から声が聞こえた。
あの少年と同じ、いや、あの頃より大人になった声だ。
「……なんだオメー」
振り返った。
そこにいたのは、あのときと同じ。
桂がいつものように堅い表情で立っている。
「おまえがひとりで祭に出かけたと聞いてな。俺もその祭に参加したくなった」
すっと流れるような動作で身を寄せてきた。その利き手には抜かれた刀の柄が握られている。
「物好きだねェ」
そう言い返し、ク、と笑う。
「銀時、祭なのだから、思いきり暴れてもかまわんのだろうな?」
「ああ、俺も思いっきり暴れるつもりだ」
「そうか」
桂はその端正な顔に笑みを浮かべた。
そして、ふたり同時に、襲いかかってくる敵に斬りかかった。

いくつもの戦いをともに経験した。
自分が夜叉になって戦ったときも、一緒に戦っていた。

松陽を亡くしたときも。

そばにいた。
そばにいてくれたひと。

あの子がほしい。

ほしいって最初に言ったのはそっちだ。
だから責任を取れ。

その手がほしいから。








作品名:花いちもんめ 作家名:hujio