CARP
「あんたから比べたらそうかもだけど……」
揶揄されているのだと思い口を尖らせれば、その膨らませた頬を三國に突かれた。
「早く大人になってくれよ、襲うこともできん」
「えっ……」
その三國の小さな囁きを公麿は聞き取ることができなかった。何を彼が言ったかを理解することが出来なかった。
「飲み物を持ってくるよ」
そう退席した男の後ろ姿を見送りながら、ふと目をやった庭先の池で、鯉が一匹ぱしゃりと跳ねた。
「子供だな……」
くすぐったいと、未成熟なままの公麿の性感に助けられた。あそこで感じようものなら自分はどう行動していただろうか、きっとあのまま力任せに彼を襲っていただろう。
まだまだ、自分は青いな……、あの少年が言うほど大人ではないのだ。こうして、目前の餌に食い付いてしまう程、飢えた男でしかない。
それにしても、少女だってもう少し危機感というものが備わっているはずだ。あんなにされてもなおまだ、公麿は三國を慕っている。
「これは純粋なのか、それとも気があるのだろうか……」
まったく読めない純粋な少年の行動に溜息を一つ着くと、三國はいつもの表情を取り戻した。
それにしても彼はよく、自分から冷静さを奪うものだと思う。きっと、その事実にあの少年は、公麿は気付いていないのだろうけれども…………
【終】