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Harry's Holiday -ハリーの休日-

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ハリーは満足そうに、鏡に映っている自分の顔を眺めた。

予想していたものより、ずっといい。
あごに手をやり、ニヤリと笑い顔を作った。

―――うん、ものすごくいい。

自分の顔を見て褒めるなんて、自画自賛もいいトコロだけど、ハリーは鏡の中の自顔に、満足げな笑みを浮かべる。
ほほやあごを撫で擦り、ナルシスト気味にニヤついている挙動不審なハリーを咎める者は誰もいなかった。

少し前から、やや広めのバスルームに入り、腰にタオルを巻いたまま、大きな鏡に立ち、自分の姿を映している。
からだを洗い、ウォーターローションを肌に擦りこむと、サンダルウッドのさわやかな香りが全身を包んだ。
濡れた髪をいつもより丁寧に櫛を通し、水分を落とす。

それから用意した、さっぱりとした洋服に着替えると、リビングへ戻った。
鼻歌を歌いながら、テーブルの上にあったクィディッチの雑誌を手に取り、それを眺める。

今朝までの、不機嫌そうな顔とは全くちがう上機嫌な顔で、白いレザーソファーにゆったりと腰かけた。

時計は午後の2時を回っている。
もうすぐだ。

──もうすぐ彼の恋人が帰ってくる。


ドラコとこの部屋で同棲を始めてから、もう半年は過ぎたはずだ。

そのあいだ、ふたりはずっといっしょのベッドで手足を絡ませるようにして眠っていた。相手の寝息が自分の首にかかり、ハリーの鼻はドラコの金髪にうずもれて、手は相手の腰を抱いている、素敵な日々だった。

恋人は美しく、からだの相性も申し分なく、抱き合ったあとの気だるい仕草も、夜中にふと呟く寝言ですら、愛おしかった。

日々は幸せで、互いが互いを愛し合うことに何の不足もなかったけれど、唯一欠点は、恋人がとても忙しいということだけだった。

ハリーとは違い、彼のビジネスはアパレル関係で、魔法界とマグル界を行き来してリサーチし、企業に情報を提言するのが仕事だった。
生き馬の目を抜く業界だからこそ、最新の情報は何よりも大切なものだ。
実際、ドラコは携帯の電源を消したことがない。

忙しい彼らは時々生活のリズムがずれて、お互いがすれ違う日々も多かったからこそ、ふたりのだけの時間を、とても大切にしていた。

ハリーには未消化の有給休暇があり、短い休みをリクエストし、気候のいいこの季節に3日間の休日が与えられることになっていた。
もちろんそれは自分のパートナーに伝えていて、相手も自分の休日に合わせて休暇を取る約束をしていたはずなのに、休暇当日になって、ドラコには突然どうしても抜けれない仕事が入ってしまった。

「約束していたのに、ごめん」
と何度も謝りつつ、ドラコは出かけていってしまった。

部屋には残されたのは、哀れな自分しかいない。
ひとりぽっちで、時間だけがたんまりとあった。
彼が出ていったあと、不貞腐れてソファーに長々と寝そべり、ずっと3日間、ビールを何本も開けて飲み続けたのは仕方がないことだ。

何もする気が起きない。

ビールの缶があちこちに散らばり、お腹が空くと手近なジャンクフードか、デリバリーピザを取った。
ストックしておいたDVDも見尽してしまった。
ベッドにも入らず、ソファーをリクライニングさせて、寝転がったまま、ぼんやりとすごしたあと、やっと彼がまともに動いたのは、ドラコが帰ってくる今日になってからだ。

汚れた部屋を片付け、ランドリーボックスに入っているものを洗濯して、掃除機をかける。
そのあと、自分もさっぱりさせようとバスルームに入った。

熱めのシャワーを浴びて、ボディーシャンプーで丹念に洗い、伸びた髭を剃ろうと鏡を覗いてみると予想外の顔が鏡に映っていた。
自分は社会人として働いているので、マナーとして髭を伸ばしたことは、一度だってなかった。

だが、三日間放っておいた自分の顔には当たり前だが、髭が生えてきている。
あごと口あたりが濃い目のブラウン色に包まれ、あごが痩せたように見えて引き締まり、精悍そうに映った。

かなりワイルドだ。
自分の男らしさがアップしたように感じた。

ハリーは自分のあごに手をやったまま、右や左、上を向いたり、俯いたりして、自分の髭の生え具合を何度も確かめて、満足そうに笑みを浮かべる。

自分が言うのも何だけど、とても男前に見えた。

―――ドラコはどう思うだろうか?

自分のこの姿を気に入ってくれたらいいのにと思った。
いや、きっと気に入ってくれるはずだ。
恋人はそういうタイプが好みだったからだ。

ハリーは身奇麗にし、掃除したての心地いいソファーに腰を落ち着かせていると、しばらくして時間どおりに玄関のチャイムが鳴った。

(帰ってきた!!)
飛び跳ねるように急いで玄関まで歩きドアを開くと、ドラコが微笑んで立っていた。

嬉しくて言葉よりも先に、戻ってきた恋人と久しぶりの抱擁を交わす。
たった3日しか離れていなかったのに、長い間会っていなかったように感じて、胸が切なくなってくる。

強く抱きしめ、互いの背中に腕を回し、腰を寄せ合い、何度も深めのキスをした。
唇と舌と指先で相手を幾度も確認する。
一連のグルーミングのような行為のあと、やっと一息をつき、ドラコが口を開いた。

「留守のあいだ、変わりなかったか?」
柔らかな声で尋ねてくる。
「変わりないよ」
と気軽に答えるハリーを目を細めながら見上げたドラコの顔が強張り、表情が一瞬で固まった。

無言で手に持ったボストンバックを玄関ポーチに下ろすと、ドラコはそのままハリーの腕から離れ、難しい顔をしたまま無言で、ツカツカとフラットの奥へと向う。
キッチンを通り過ぎ、リビングも素通りして、バスルームのドアへの中へと消えてしまった。
すぐにバサバサというという服を脱ぐ音が聞こえてきて、バスに湯を張る水音まで響いてくる。

ハリーはニヤニヤとやに下がった顔で失笑した。
(ドラコってば、せっかちだなぁ……。僕だって、一応リビングで座ってから少し落ち着いたら、コトを始めようとしたのに)
満更でもない笑顔で肩すくめる。

「ハリー!ハリー!何しているんだ?早くこっちへ来い」
命令口調なのも、愛想がないのも、いつものことだ。
いやむしろ照れている時のほうが、ドラコはぶっきら棒になってしまう。
そんな彼の照れ屋で天邪鬼なところも、ハリーは大好きだった。

嬉しそうにガラスの扉を開くと、予想通りドラコは裸のまま立っていて、ハリーに背を向けたまま熱心に、鏡の隣にあるキャビネットの中のものを探している。
「お前もさっさと脱げ」
いつもだったら、もうすこしこういう場面だと、甘やかな口調に変化するのに、今のドラコは何かに気を取られて、そんな場合ではないようだ。

「どこに仕舞ったのかな……。どこだったか……。ええと――」
などと言いつつ、棚のビンをガチャガチャさせている。

ハリーは湯気が上がり、暖かい湿気に包まれた浴室で、ついさっき着たばかりの服をまた脱ぎ始めた。
顔は上げたまま、目の前で揺れている美しい背中と、麗しいヒップラインに、目は釘付けだ。

少し前に洗ったばかりなので、自分のことより、ドラコをどうやって洗おうかと想像し始める。
作品名:Harry's Holiday -ハリーの休日- 作家名:sabure