君に、泣く
なぜ銀時がここに来たのか、桂にはやっと分かった。あの世話好きの僧侶が桂に銀時と逢わせてやろうと考えたのだろう。桂は僧と初めて会った時に銀時の名前を呼んでいるし、僧が彼はどんな人なのかとさり気なく聞いてきた事もある。かぶき町で万事屋をやっていると伝えたから、探しにくくはなかったはずだ。
「心配をかけたな」
「ああ、すげェ心配したぞ」
そう言って、銀時は桂のほうに向き直る。
「でも、お前が無事で、本当に良かった」
その声は、桂が驚くほど優しかった。
銀時の言葉が、桂の胸に沁みる。
桂の眼がきゅうっと痛んだ。
その次の瞬間、涙が浮かんできた。止める事はできなくて、涙は流れ落ちてゆく。
「えっ、お前、泣いてんのか!?」
銀時は動揺する。
「俺、なんか悪い事言ったか? それとも傷が痛むのか?」
慌てる銀時をよそに、桂は身体を起こした。そして、銀時から顔を逸らす。泣いているのを見られたくなかった。
「お前が悪いんじゃ、ない」
桂はそれだけ言った。
うつむくと、長い髪が顔を隠した。
銀時はその髪を一房つかみ、少し引っ張る。
「……なあ、桂。こっち向いてくれ」
桂の反応はなく、銀時は更に言う。
「頼むから」
懇願した。
それを聞いて、桂はゆっくりと動き始める。銀時は桂の髪を放した。
銀時と桂は向かい合う。桂の眼はかすかに赤い。
二人とも、言葉が出てこなかった。
そして、銀時はなにも言わず、そっと桂の肩を引き寄せた。