君に、泣く
銀時の背中に叩きつけられる声は、硬い。
「もし、お前が深い傷を負ったり、殺されたりしたら」
「仇を討つって、ヤツか」
「そうだ」
「俺は、仇を討ってもらうよりも、一緒に戦ってほしいのだがな」
「それは無理だ。俺とお前ェの道はもう分かれちまってんだ」
二人は今、別々の道を進んでいる。それでも、多く時間を共に過ごしているし、セックスもする。身体の関係があるからというわけではないが、桂の事を一番に分かっているのは、自分だという自負もある。そして、たぶん、銀時の事を誰よりも知っていて理解しているのは、桂だろう。
それのに、同じ道を行く事は、できない。
だからこそ、同じ道を行けない事が、よく分かっている。
「……すまない。我が儘を言った」
桂の声は穏やかだった。
それは、諦めに似ている。
「謝ってほしかったわけじゃねェよ」
諦められるぐらいなら我が儘を言われたほうがマシだと思った。
廊下の壁に、銀時は右の拳をぶつけた。
衝撃音が部屋に響く。
けれども、桂はなにも言わない。
銀時は、硬く閉じた上下の歯をギリリと鳴らすと、足を前に動かす。
胸の中には苛立ちが渦巻いていて、銀時は、それをそのまま現すように乱暴に歩いた。