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娘娘カーニバル 第2章(2)

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愛紗ちゃん、海くん、青嵐ちゃんの様子どうだった?」
心配げに瞳を揺らす桃花に愛紗と海は首を振った。
「『この世の終わり』みたいな顔をしていたな」
「趙雲、しばらく立ち直れないと思うからそっとしておいてくれ」
実際、立場が逆なら海も同じことをしている。
星に触られて変に感じていたことだけでも引き籠りたいのに、
それを赤の他人に見られたのだから羞恥心は限界を超えるだろう。
(どう慰めてやろう…)
青嵐のことを心配しつつ、海はお茶を飲む客人へと目を向けた。
薄紅色の髪を二つに輪を描くように結い上げ、褐色の肌をした少女だ。
年は鈴鈴や朱里と同じくらいだろうか。
わきには布に包まれた細長い荷物が立てかけてあり、ひどく少女には不釣り合いな気がする。
客人の向かい側には朱里が座り、小さくため息をついていた。
「で、どうしてここにやって来たんですか、孫尚香さん?」
「家出してきて、お金がなくなっちゃったから♪」
「そうですか、家出をしてきて…」
にこにこと笑顔を交わす二人だが、纏っている空気には温度差が存在していた。
空気を敏感に読み取り、なおかつ常識のある愛紗がわざとらしい咳払いをこぼす。
「こほん。尚香殿はどうして家出などしてきたのだ?」
その話題になった途端に、尚香の目じりが上がる。
「しゃおは悪くないもん!悪いのは蒼月だもん!」
頬を膨らませて、そのままぷいっとそっぽを向いた。
そのむくれた姿に海は小さく笑みをこぼす。
腰に武器を携帯し、おてんばなところは三璃紗の孫尚香によく似ている
(同一人物みたいなものだから当たり前かもしれない)。
しかし、三璃紗の彼女よりも子どもらしい、年相応の少女に見えた。
「それよりも、関羽。なんか人が増えてない?」
「あぁ。海と青嵐のことか。ちょっと海、こっちに来てくれ」
手招きをされれば断るわけにはいかない。海は愛紗に近づいた。
「こちらは海。訳あって今は私たちと共にいる」
「こんにちは、尚香姫。俺は海、よろしくな!」
手を差し出せば、尚香はつかさず手を握ってきてくれた。
手のひらは武芸をするもの独特の感触で、腰の武器は伊達ではないことを物語っている。
「やっぱりこっちの尚香姫も武器を使うんだな」
しみじみと呟いた言葉に尚香がぴくりと肩を震わせた。
「こっちの?ってことはまさか…!」
「みなさん、もう一人お客さんがいらっしゃいましたよ」
扉から黄忠が盆を持って入ってきた。その後ろで璃々が誰かの手を引いている。
「こっちだよ、お姉ちゃん」
「璃々ちゃん、急ぐと危ないって!」
璃々の後から入ってきたのは碧眼の少女だった。
大人しそうな品のある顔立ちに白い肌に銀色の長い髪。
空とも新緑ともとれる碧眼は優しげな印象を受ける。
白を基調に黄色や水色のふんわりとした服は大人しそうな彼女によく似合っていた。
(桃花の次ぐらいに可愛いかも…)
海は少女に見とれかけるが、彼女の腰に外見に似つかわしくない刀が下げられているのに気付いた。
金の柄と刀身に赤い文様が刻まれている刀は知り合いのある男児が持っているものに酷似している。
(あれって虎錠刀!ちょっと待てよ、虎錠刀と言えば)
戦うことが大嫌いで、でも家族を守りたいと武器を手に取った優しい侠。
そしてよくよく見れば、透き通る水色の盾が背負われている。
海は赤壁で一緒に戦った友人を思い浮かべ、すぐさま碧眼の少女を指差した。
「おま、おまっ…」
しかし、目の前の少女と記憶の中にある侠との差に次に続くものが出てこない。
驚愕に身動きのできない海を差し置いて尚香が大声を上げた。
「蒼月、あぁ、もう!張飛、次に会ったら10番勝負だからね!」
「お、おうなのだ…」
鈴鈴の返事もろくに待たずに、尚香は窓枠に足をかけるとひらりと窓から身をひるがえした。
ものすごい勢いで森へと遠ざかっていく尚香に一同は唖然と見送った。その中で、いち早く我を取り戻したのは碧眼の少女だった。
「こら、尚香!」
つかさず、碧眼の少女も窓枠に足をかける。そのまま飛び越えようとする少女にはっとし、海は腰に手を回した。
がっしりと抱え込み、逃げられないようにする
「えっと、だれか知りませんけど、俺は尚香を追わないけないんで…」
「いや、ちょっと待ってくれ!」
なんとか抜け出そうとする少女は困ったように桃花たちに救いを求めるが、桃花たちは首をかしげるばかりで何もしない。
一方の海は顔に盾が当たって痛いがこの際気にしてはいられなかった。
(やっぱり、言葉遣いとかがアイツだ。絶対アイツだ!)
「お前、孫権だよな。三璃紗の孫権ガンダムだよな!」
確信をもって、碧眼の少女に尋ねれば少女は目を丸くした。
ささやかながらあった抵抗も収まる。
「なんで、俺が三璃紗にいたことを知って」
心底不思議そうに見つめてくる少女、孫権ガンダムに海は捕捉の力を緩めた。
「まあ、わかんないのも無理ないよな。俺だよ、劉備ガンダム」
背中の龍帝剣を孫権ガンダムにも見えるように示す。
これは三候のうちの一つ龍帝の魂が宿っているとされる、劉備ガンダムの愛剣だ。
共に戦ったことのある侠ならば、龍帝剣を忘れるわけがない。
孫権ガンダムは龍帝剣と目の前の少女を何度も見比べた。
快活そうな金の瞳には民の明日を守ると言った侠のものであり、その輝きは失われていない。
まっすぐで、人を包み込む光だ。
孫権ガンダムは窓枠にかけていた足をおろし、海を見つめた。
「やっぱり、来てたんだな」
「孫権、やっぱりって?」
「それは…」
「義勇軍のみなさん、大変だ~!」
孫権が言葉を紡ぐよりも先に、村の男二人が息を切らして駆け寄ってきた。
窓越しの尋常でない男の様子に、部屋にいる全員が身構える。
その中、桃花は身を乗り出し男へと向かい合う。
「どうかなさったんですか?」
「劉備さん!大変なんだ、あの黒い兵隊たちが現れたんだよ」
「あの黒い兵隊って、三頭身ぐらいで全身が黒一色の機械の兵隊ですか?」
「あぁ、そうだよ。俺たち、どうすれば…。あいつら木の棒なんかじゃ倒せねえし」
「森には村のもんが何人か入ってるんだよ」
男が言い終わると急に孫権ガンダムが男の肩をつかんだ。
「その森に女の子はいませんでしたか?髪を二つに括った青い目の女の子!」
「森に入っていったのは見たけどよ…」
「尚香…」
短く呟いたすぐ後、孫権ガンダムは窓からスカートを翻し、男たちを飛び越した。
「おい、孫権!あぁ、くそっ!」
「海君、みんな、私たちも行こうよ」
桃花の言葉に、おのおのの武器を手にした恋姫たちはにこりと笑みを浮かべる。
「当たり前ではないか」
「こんな時こそ、義勇軍の出番ですもの」
「早く行くのだ、尚香と村の人が心配なのだ」
意気込む一同の中、孔明は冷静に落ち着いた態度を見せる。
「黒い兵隊が出た詳しい場所を教えてください」
頼もしい華やかな笑顔に男たちから力が抜けていった。
この笑顔を見るたびに、この人たちなら大丈夫と信頼できると心の底から思える。
「場所は大きな岩のある川原だ」
「頼みました、みなさん」
「任せてください、さあ、みんな行くよ!」
桃花は孫権ガンダムに習い、窓から飛び出そうとするが動作がもたもたとしている。