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世界で一番遠い I love you(英米/R15)

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世界で一番遠い I love you act1


最初は彼の―――――イギリスの弱点を握った。
それくらいの気持ちだった。
そもそも彼の告白だって最初は笑い飛ばしたくらいだった。
エイプリルフールにはちょっと早いんじゃないかい?と。
だけど、イギリスの告白はジョークなんかじゃなかった。
本当はもうずっと前から弟として見ていなくて、一人の人として好きだったのだと
頬を赤く染めながらアメリカは告げられた。
気持ち悪い、とは思わなかった。
アメリカに同性愛者が皆無というわけではなかった上に、アメリカには男同士だからとか
あるいは女の子同士だからということに拘りは無かった。
だが、自分自身はどうかと問われればそもそも考えたことすらなかったし
告白されるまでイギリスのことを恋愛対象として考えたこともなかった。
だというのにイギリスの告白にイエスと答えたのは打算が働いたからに他ならない。
狡猾で強かな老大国。
そんな彼に苦渋を飲まされたことは一度や二度じゃない。
そんなやりにくい相手の弱点を掴むチャンス。
ヒーローとしては失格だと思ったが、結局アメリカはイギリスの告白に応えた。
イギリスの弱点を握る。
それだけだ。それだけのはずだった。
それなのに今は。


世界で一番遠い I love you


肉の焼ける香ばしい香りにつられてアメリカは瞼を開けた。
目覚めは悪くはない方なのだが、まだまどろんでいたくてそっと目を伏せる。
昨夜は遅くまでイギリスとホラー映画を見ていた。
付き合い始める前はホラー映画に限らず、アメリカと映画観賞をするときは
嫌嫌といった様子を隠さず、鑑賞し終えた後は皮肉交じりの批評をし始める。
それが元で喧嘩になったことは数知れず、どうしても一緒に見る人が居ない時以外は
アメリカはイギリスのことを誘わなくなっていた。
だが付き合い始めてからは文句を言うことは減り、時にはイギリスのお勧めの映画を
二人で見ることすらあった。
イギリスの勧めてくる映画はほとんどがアメリカの好みに合わないものだったけれど
時には意外な発見もあるので、今日は何を見るのだろうと楽しみに待つことすらあった。
昨日はイギリスのお勧めの映画を見た後、まだ寝るまでに時間があったので
日本の勧めるジャパニーズホラーを見ることにしたのだ。
だが、それが失敗の元だった。

「Noooooooo!!何なんだい!!どうしてここから出てくるんだい!?」

「煩ぇ!!少しは黙って見てろ!」

「これが黙っていられるかい!?うう、こんなに怖いなんて聞いていないんだぞ」

「アメリカさんには少し怖いかもしれませんね」と微笑みながら渡されたのが
悔しくて、そんなの平気さと笑って受け取った。
いつもついつい悲鳴を上げてしまうけれど、そんなに怖いわけじゃない。
ちょっと驚いてしまっただけだ。
だから今回もそうだろうと思っていた。
けれど次から次に襲いかかるゴーストに心臓を鷲掴みされ、クライマックスの
前だというのにアメリカはブランケットを被ってソファーに丸まっていた。
視界を閉ざしても聞こえてくる世にも恐ろしい呻き声に身体が震える。
見たいけれど見れない。
ジレンマに唇を噛むとそっと背中に何かが触れた。

「Nooooooo!!俺は食べたって美味しくないんだぞー!!」

「落ち着けアメリカ」

ギャアと騒げば宥めるように優しく背中を擦られる。
背中を触っているのはゴーストではなくどうやらイギリスらしい。
まるで子供を宥めるような撫で方に腹が立たないわけではないけれど
安心してしまうのも事実で、大した抵抗もせずにそれを受け入れていると
気がつけば映画はエンドロールを流していた。
もそもそとブランケットを脱いで腹と太ももの間に抱え込んで
ソファーに座り直す。
ずっと啜ったのは鼻水だけで涙なんて流していない。
隣に座っていたイギリスが心配気に顔を覗き込む。
大丈夫か?と聞かれてこくりと頷いた。
そうか、と淡く笑ったイギリスの顔にアメリカの胸がドクリ、と大きく鼓動を刻む。
まるでジョギングをした後のように心臓は高まりを見せた。
今までは普通だった。
別にイギリスに笑いかけられても何とも思わなかった。
それなのに今は少し触れられるだけで心臓がダンスしそうなくらい脈打って
アメリカを戸惑わせる。
おかしい。
ホラーに驚いたときとは少し違う胸の鼓動を抑えるように胸を掴んでアメリカは俯いた。
イギリスに微笑まれるだけで、触れられるだけでこうなってしまうのは
何も今日だけのことではない。
イギリスと付き合い始めて数カ月。その間に何度もあったことだ。
最初にそうなったのは確か付き合い始めて2回目にイギリスの家に遊びに行った時。
コードに足を引っ掛けてしまってイギリスの方へ倒れ込んでしまったアメリカを
イギリスはふらつくこともなく、しっかりと支えたのだ。

(俺が思っていたよりもイギリスの手はしっかりとしていた)

倒れ込んだアメリカを支えた手は自分が思っていたよりもしっかりしていて
まるで思い出の中の彼の差し伸べた手のようだった。
あの雨の日。彼があんなに小さく見えたのにあの日、イギリスの手は揺らぐこと無く
しっかりとアメリカを支えた。
そのときからイギリスが触れるたびに妙な感覚が過るようになり、気がつけば彼の
一挙一動にアメリカは振りまわされていた。

「もう寝るか」

背中を擦っていたイギリスの穏やかな声に意識を引き戻され
顔を上げると心配げな視線とぶつかった。
平気だよ、と答えるがイギリスは首を振る。
付き合ってからますます甘やかしが酷くなったイギリスはホラー映画に
怯えるアメリカを茶化さなくなった。
それは良いことなのだがこんなにも甘やかされると疑いの方が強くなる。
じつはイギリスはアメリカの真意など見抜いていて、逆に情けないところを知って
弱みを掴もうとしているのではないかと。

「アメリカ?」

「・・・何でもない。寝る」

あくまで心配だ、と語る瞳からつい、と視線を逸らしてアメリカは答える。
視線を逸らしたのは決して自分が彼を欺いているという罪悪感からではない。
何でもすぐに心配だとイギリスが言葉だけではなく、視線でも訴えてくるからだ。