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世界で一番遠い I love you(英米/R15)

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そもそもアメリカはイギリスに心配されることがあまり好きではない。
いちいち口を挟まれなくとも、きちんと自分でできるし彼の思うような子供ではない。
だから「ああもう本当にキミは口煩いなあ」とうっとおしさを隠さずに
アメリカはイギリスに言う。
だがイギリスはその場は退いてくれても次に会うときは忘れていて
嬉々として世話を焼いてくる。
最近は「恋人」という代名詞を得たおかげなのかますますうっとおしい。
だけど、以前のようにうっとおしいと言うことができない。
言おうとはするのだ。

「キミは本当に要らない世話ばかり焼くよね。少しは相手のことを考えたらどうだい?」

と。
喉元までこみ上げてくる言葉は後は音にするだけだ。
それなのにまるで発声の仕方を忘れたかのように言葉は音にならない。
「国」として必要ならば冷たい態度で突き放すこともできるのに「個人」となると
自分の思うように振る舞うことができない。
そんな自分が歯痒くて悔しい。
そして現在も包み込むように繋がれた手を離すことができない。
イギリスの手はアメリカの手よりも一回り近く小さい。
ぴたりと手と手を合わせると彼の手はアメリカの手によってほとんど隠されてしまう。
だがどちらかというと柔らかく子供の手に近い肉つきのアメリカの手に比べて
イギリスの手はアメリカの手よりも骨ばっていて、手の甲は血管が薄く透けて見える。
サイズ的には小さいのにイギリスの方がより大人の男らしいのだ。
そして振りほどけなかったアメリカは結局イギリスに手を取られたまま
床に就くことになった。

(これじゃ恋人みたいじゃないか)

アメリカと恋人同士になってから買い替えたというベッドはキングサイズで
しっかりとした造りの為、二人で眠って多少の寝返りを打ったり
暴れたりしてもびくともしなかった。
投げ出していた右手を胸に引き寄せて、ふかふかの枕に顔を埋める。
微かにラベンダーの香りがする枕は柔らかくアメリカを受け止めて
ささくれた心を少しだけ癒してくれた。

(・・・一応は恋人なんだよね・・・けど、あの人キスもロクにしないし・・・
あれだけエロ大使とか言われているのに)

アメリカと付き合い始めてからイギリスは頬や額にキスをするが
唇にはしたことがなかった。
セックスだとか以前の問題だ。
アメリカの見ている限りイギリスは簡単な、恋人と言うにはあまりにも
稚拙な触れ合いで満足しているように見える。
兄弟にしてみたら少しだけ行き過ぎた触れ合い―――――もっともアメリカが
幼い頃はこの程度の触れ合いは行っていたのだけれど・・・その幼少時と同程度しか
イギリスは触れてこないのだ。
このことが如何におかしいのかなんて誰かに指摘されなくてもわかっている。

(けどまあちょうどいいか。俺はあの人のことを好きで付き合っているわけじゃないし)

こてん、と寝返りを打ちながらアメリカはそう結論付けた。
そうしてとろとろと考えているうちに靄がかかっていた思考は晴れていく。
まだ眠気の残る目にも容赦なくカーテンの隙間から零れる光が朝の到来を告げる。
先ほど、イギリスの居た辺りに触れていた手には冷たいシーツの感触しかなかった。
休みの日は仕事のある日に比べて起きる時間が遅いとはいえ、イギリスが起きてから
相当の時間が経っているのだろう。
先ほどはベーコンの焦げる匂いしか感じ取れなかったが今は香ばしいパンの匂いも
寝室まで漂ってきている。
もう少し経てばイギリスが無理やりにでも起こしに来るだろう。

(まだ起きたくないなあ)

ごろん、と朝日から逃れるように再び寝返りを打つ。
ぼうっと閉ざされたままの扉を眺めていると去ったはずの眠気が瞼を下していく。
最近は何かと忙しかったから眠る時間も遊ぶ時間も少なかった。
昨日から始まった一週間のまとまった休暇は半年ぶりに得られた連休で
本当は英国に渡る気などまったくなかった。
それなのにアメリカは律義に仮初めの恋人に連絡を入れ、休日を英国の
郊外の家で過ごしている。
何故、連絡を入れたのかわからない。
けれど考えるよりも先にアメリカの指は彼へ繋がる短縮ダイアルを押していた。

(そういえばあの人、めちゃくちゃ怒っていたなあ)

アメリカが連絡を入れた時、ロンドンは日付変更線を大いに回った時刻だった。
それなのに3コールもしないうちにイギリスが出たのは彼もまた仕事に追われていたか
あるいはフランスと飲んでいたのか―――――実際はたまたまだったらしいのだけれど
すぐに電話に出たイギリスは恋人同士になってからは潜めていた皮肉を
思い切りぶつけ注意をしてきた。
そのときのイギリスといったらww2のときにアイスクリームを貰おうとして
転んで骨折した時を彷彿とさせるような怒り具合だった。
その怒り具合にはさすがのアメリカも辟易して通話を切ろうとしたのだが
「で、そんなに重要な用は何なんだよ?」と皮肉たっぷりの口調で言われて
思わず「半年ぶりの長期休暇を恋人と過ごそうって言うのはキミにとって
重要な用事にならないのかい?」と言ってしまった。
しまった、余計な事を言ってしまったと後悔したが言ってしまったものは仕方が無い。
絶句している様子のイギリスに「どうなんだい?」とたたみ掛け―――――後はもう勢いに
乗るしかなかった。
嫌がらせ交じりに朝一番の飛行機に乗り、昼過ぎに向こうに着いたときには
こんなときでも、こんなときだからこそか妙に気合の入ったスリーピース姿の
イギリスが出迎えに来ていた。
会議でもお目にかかれない気合の入りぶりに一瞬口元が引き攣りそうになったが
「朝からキミは堅苦しいなあ」「うるせえ馬鹿!」とうまくごまかすことに成功し
イギリスの運転する車に乗り込んで、彼の家へと向かった。
それからはいつも通りだ。
アメリカは持ってきた携帯ゲームをやり、イギリスは刺繍をしたり読書に励んでいた。
夜に映画を観たのもいつもの流れでそれは付き合い始めてからも変わらない。

(俺と彼が付き合っている意味ってあるのかな・・・)

そんなことをシーツに包まったままぼんやりと考えているとかちゃりと扉の開く音が
アメリカの耳に届いた。