不眠症治療/1
???―――夜
ぎりぎりと体を締め上げる感覚。
途方もないくらいに緩やかに広がっていく感覚。
締め上げられていながら開放される体内の熱。
寒いくらいに明け透けな空間を感じながら、同時に灼熱の楔を打ち込まれているようで・・・。
もしかしたら、体の皮が剥がされているのだろうか。
身動きの取れない闇の中でぼんやりと焔樹梓麻は考える。
脳裏によぎるイメージはまな板に打ちつけられてさばかれる鰻。頭に楔を打ち込まれ、細身の刃に体を切り裂かれて広げられていく。皮を剥かれ、平たく切り広げられても、それでものたうとうとする生命の残滓。
でも、違うよな。
自分は鰻ではないし、楔は頭一ヵ所ではなく、体中至る所に感じられる。もしも己が自覚のない鰻なら、職人はとてつもない下手くそのド素人に違いない。
熱い。
寒い。
正反対の感覚を同時に味わって、翻弄される。
けれど一番はっきりとして確かなのは『気持ち悪い』という一つ。
血管の中に細く柔らかい長大な白虫が這うような。
おぞましい感覚。
――眠れない。