不眠症治療/1
<章= 自宅マンション―――深夜 〉
カーテンを開けると窓の外には光と闇が満ちていた。
遠く等感覚に見えるのは高速道路の白色灯。時折家と家の間を流れる赤い輝きは、早朝という夜を走る車のヘッドライト。
時計を見ればまだ夜の四時。
「・・・目ぇ、冴えちゃったな」
湿ったシャツを脱ぎ捨てて、クロゼットからタオルを取り出す。全身がびっしょりと汗をかいていた。とりあえずシャワーを浴びて汗を流そう。その後は、どうしようか。
床に落とした汗だくの布切れを手に、遥かに続く人工の光を見つめる。駆逐されてさらに濃くなった闇も、じきに朝日に薄れるだろう。
ベッドに目をやっても眠ろうという気にはなれない。
体はだるい。ただ疲れているのとは違うから、気だけは動いていたいと主張する。滑らせた目の先に写った冷蔵庫。グレイの滑らかな曲線が微かな光を跳ね返していた。
「……ふわぁ」
大きなあくびに続けて体がぶるっと震えた。どうやら冷えてしまったらしい。
「とにかく風呂だな」
短く呟いて梓麻はシャワールームに足を向けた。