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Da Capo Ⅰ

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「ねーつちうらー!これどうだろう、いいかな?」
「え?うーん…それはやめたほうが良いんじゃないですか?」

火原先輩が俺の目の前にズイっ、と熊のぬいぐるみを見せた。近すぎてぼやけてる。

「えー、なんでーかわいーのにー!」
「いや…幾らなんでもそれは…ちょっと…ね…」
「うーん…土浦が言うならそうか…」

貰う方にとって見たら、でかすぎて嫌だと思うんだが…。とは…流石にストレートすぎて言えない。
だから、俺はちょっと、と言う言葉で濁した。あっさりと引き下がる先輩。

日曜日。晴天。絶好の練習日和…だったはずなんだが。
今日は、先輩と俺と二人で女性ばかりがいるファンシーな店に来ている。然も男二人出だ。周囲からの視線が痛い…痛すぎる。

(何でこんな所にいるんだ俺は…)


心の中で一人ごちる。
事の発端は、金曜日のお昼休みの事だった。わざわざ音楽科の先輩が普通科の俺のクラスまで足を運んできたのだ。

「頼む!一生のお願い!日曜日、俺と付き合って!!!」

俺に会うと同時に掌を合わせて、大声で頼み込んできた。目立つ、目立ちすぎだよ先輩。制服だけでも目立つのにコンクール出場者である先輩は学校内で知らない人間がいない位なんだから。

「あ、あの、先輩状況が読めないので、ちゃんと説明してくれますか?」
「うんうん、そうだよね!わかった!!」

突っ走って前しか見えなさそうな先輩に俺は冷静さを求めるよう努力した。…あまり分かってなさそうなのが問題な気がするが。

「あのさっ!!」

といった瞬間に、「あ、火原先輩に土浦君」と前方から声を掛けられた。
日野だった。左手にバイオリンケースを持って廊下をすたすたと歩いてきた。多分練習を終えてきたのだろう。

「よぉ、日野」
「え?ひ、日野ちゃん?!」

俺と先輩の発見した時の温度差は激しかった。
俺は普通。先輩は明らかに可笑しい、動揺している。

「どうしたの?二人とも、何か相談してるの?」

すっと近づいてきて日野は俺たちの中に入ってくる。

「ん?あ、先輩がさた…」

と俺が言おうとすると、先輩が慌てて俺の口を押さえ、

「いあやいあやいあいあやいやいあやっ、なあなななななな何でもないから!!」

と慌てふためき、じゃっ、と右手を上げて猛烈な勢いで走り去っていった。その姿を呆然と、日野と二人で見送る。

「な、何だったの?」

苦笑し見上げながら俺に聞いてきた。

「しらねぇよ…」

俺が聞きたい位だった。その後、夕方部活に出る前に少しだけ練習を、と思い練習室へ向かった時、先輩にばたり出逢った。

「あ、土浦」
「先輩…何してるんですか?今日、あっちは?」
「あ、うん、一寸開始が遅れてるからさ」
「ふーん、そうなんですか」

時間的に見てもオケ部は練習が始まっていても可笑しくない。偶然ではなく完全に「待っていた」感がある。
俺はその事はあえて突っ込まず、昼休みの話をした。

「先輩、今日の昼休みなんですけど。何か俺に頼みたい事あるんですか?」
「あっ…あ、あああ…うん」

顔を紅くして緊張した表情を俺に見せた。何をそんなに緊張するのやら。そんなに俺が怖いか?でも先輩からすれば怖いものなんて何も無いか…。などと考えをめぐらせていると黙っていた先輩が小声で切り出した。

「あのさ、今週の日曜日さ、暇?買い物に付き合って欲しいんだよね」

買い物?何のだろうか。分からないまま、いいですよ、と二つ返事をした。

「ほんとう!?」

ぱぁっ、と顔に光りが宿る、余程嬉しかったようだ。

「ありがとう!恩にきるよ!!」

ぐっと手を両手で握られる。先輩の手は意外と綺麗だ。この指と持ち前の明るさと呼吸で旋律を奏でるのだ。楽器が違うとは言え、音楽とは「体で表現するもの」だと。火原先輩を見ていると、そう感じる。

(いや、先輩だけじゃないか…)

日野もそうだ。
まだまだ稚拙なのかもしれないが、嘘のない動き。音に心全てを乗せる。純粋に敵うものはないな、と自身に刻んだ。

「何時の何処で、待ち合わせどうしましょうか?」

嬉しそうに万歳して喜んでいる先輩を現実の世界に戻す言葉を掛けた。兎に角まずは時間と場所を決めないといけない。

「あ、じゃぁね…」

と、先輩はショッピングモールを指示してきた。
時間は、午前十一時。

「早すぎる?」
「あ、いえ、そんな事ないですよ。了解です」
「ありがとう土浦!じゃ、オレ練習行くわっ」
「お疲れ様です」

ばいばーい、と先輩は本当に嬉しそうにオケ部の練習場へ走りながら移動していった。
ふぅ、と溜息をつき時間を見る。

(げっ、やばい遅刻する!)

もう、練習できる時間は残っていない。俺は慌ててサッカー部の部室に戻った。


で、現在に至る訳である。
先輩は探すのに必死でこの状況を理解していない。

「うーん、これが良いかなぁ」

真剣に選ぶ眼差しが明らかに店内の女の子の視線を釘付けにしている。
確かに、先輩は格好良い。誰が見たって振り向くと思う。色っぽいとかそう言うオーラはないが、上手く説明でしないが…。

(…犬っぽいんだろうな、然も子犬で元気なヤツ)

俺の脳内では、楽しそうに尻尾を振りながら遊んでくれとせがむ子犬が浮かんでいた。

「ねー土浦!遊んでないで真剣に探してよ!」
「あっ、すんません!」

頭の中を覗かれたかと思うくらいのタイミングで先輩の突込みが入る。
この人は恐ろしいくらいに勘が良い。変な所ですこん、と入り込んでくる。店内の視線を振り切って、俺は先輩の探し物の手伝いを再開した。

小一時間ほど経過した頃に頼まれた日から気になっていた疑問をぶつけた。

「処で、先輩。今日は何でこんな所に?誰かにプレゼントですか?」
「あっ、あああ、う、ううう、うん」

思い切りどもりり気味な返信が返って来た。
プレゼント。

(然も女性御用達の、こう言うファンシーな店で?)

確かに「可愛いものがある店に連れて行って欲しい」と言われたからここに連れて来たが。もっと早く決まると思ったが、対象者を言わない為か時間がかなり掛かっている。既に店に入って二時間は経過している。

(別の所に行った方が良いかもな…)

そう思い始めていたので、対象者を特定する為に先輩に聞いたのだ。移動するにも場所が絞れない。

「どれ位の年齢ですか?」
「あ…うん、つ、土浦と同じくらい」

俺と同じくらいか…。

「どういうのが好きな子ですか?」
「あ…う、うん…なんだろう…」

何だろうって…。この人は知らないで物を探しているのか?
年齢だけでは流石に絞れない。悩み始めた俺をよそに先輩がポツリ呟く。

「女の子ってさ、可愛いもの好きだよね」
「…あ、は、はい…そうですね。中には駄目な人もいますけれど」
「…大丈夫だと良いな…」

目の前のぬいぐるみの入った小さなマグカップを手に取って先輩は眺めていた。
白いマグカップ。全面にはプリントがなく、取っ手の部分に小さな天使の羽根らしきものがついていた。ぬいぐるみは小さな猫だった。

「良いんじゃないですか?これなら多分嫌がる人少ないでしょうし。結構使い勝手よさそうだから、喜ぶと思いますよ」
作品名:Da Capo Ⅰ 作家名:くぼくろ