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Da CapoⅢ

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見てしまった。
日曜日。
土浦と火原先輩が買い物をしている姿を。
しかもかなり、ファンシーなお店で。
男が独りで入るには中々厳しいと感じる。
先輩は、何かの間違えで入ったり…とかありえそうだけれど…土浦はないだろ、と率直にそう思った。
これには何か裏がある、と僕の中で第六感がそう訴える。
遠くから見ていたため、会話は聞こえなかった。
こう云う時、読唇術とか身につけておけば何を話しているか分かるのに…と考えてしまう。
見ていて、なんだか引っかかったのだ。

「之は何かある」

そんな風に。
興味本位だったのが、胸の奥でざわつくような感覚に変わり。
それは日付を飛び越えた別の日、自分の「アンテナ」が正常に反応していたのだと判明する。

見てしまった。
昼休みの時間。
まさに衝撃。
頭にがーんと落ちて、稲妻が空に輝く感覚。
明らかに、明らかにあの袋は見たことがある!
先輩が日野さんに渡している、あの袋には見覚えがある!

僕は呆然とする。
そして確信する。
あの時反応したのは日野アンテナ(僕命名)で、対象となるものに大しては敏感なのだと。
良く見ると、日野さんは断っている。
心の底で「断れっ」と連呼していた。
別に先輩には敵意はないのだけれど、どうしてもそういってしまう。
なんだか悔しい。
どうしてだろう。
やっぱり僕は日野さんが好きだからだと思う。
彼女の音楽も、そして彼女自身も。
結局日野さんは困りながらも受け取り、急いで走り去っていく先輩の背中と困り果てた日野さんを目に焼きつけ。
今日と言う日が終わりを迎えようとしている。

でもただでは起きないのが僕だ。
プレゼント攻撃にはプレゼント攻撃を!
平和的なハムラビ法典を紐解けばいいのだ。

でも、行き成りプレゼントしたら向こうも困るだろう。
授業中に考えた結果、身近な存在に気が付く。
彼女にとっても身近で、僕にとっても身近な。

(…彼女達なら知っているだろう!)

必死に構内を探し回って、何とか見つけた!
冬海笙子に、天羽菜美!
絶対一緒に居るんだと思っていたんだ。


何時も通りに挨拶をして、何時も通りに話しかければよいのだ。
怪しまれてはいけない。
心の中を悟られてはいけない。
特に天羽さんは注意だ。
報道部に居る為か、鋭い所を付くのが上手い。
いや冬海さんも注意だ。
ぼんやりしながらも、実は彼女はかなり敏感だ。

「あのさ、日野さん見なかった?」
「い、いえ…」
「そうか…残念だなー。今日、一緒に練習しようと思っていたのに」
「え…っ、そ、そう、なんですか…?」
「本人聞けばいいじゃないの?」
「いや…まぁ…その…」
「他人に聞いてどうこうするより、同じ学年なんだから聞けばいいじゃない、本人に。科も一緒だし」
「あ、う、そ、そう…なんだけどね」

とりあえず会話をするが、どうしても引き出せない。
重要な事を聞こうと思うとどうしても、「裏」を気にしてしまう。
だが埒が明かない、と判断し一番確信的なところを聞こう!、と心に強く思う。

「一つ聞きたいんだけれど」
「何?」

行き成り警戒した声が耳に入る。
そんなに僕は不審者なんだろうか。

「いや、ひ、日野さんの誕生日とかって何時か知ってる?」

誕生日を聞く、我ながらナイスアイデアだと思う。
これならば渡す事にも問題は生じない。

「もう過ぎてるわよ、とっくに」
「…そ、そうなんだ…」

…読まれてる…、と思った。
天羽さんは完全に「僕のやりたいこと」その先を読んでいる。
おそるべし、魔性の女!

「あ、あの、先輩、そんなに強く言わなくても…」
「あ?あぁ、ごめんごめん。こいつが大抵何かを聞いてくる時は、よからぬ事が多いから」

キツイ視線を送られる。
完全に不審者扱いだ。
確かに、少しは反省すべき点はあると思う。
あれだけ、日野さんへ好きだオーラを出せば…警戒されても仕方がないか。

でも、彼女のあの音楽を聞いたら誰だって恋に落ちると思う。
何にも捕らわれない、純粋で真っ直ぐに「愛する」気持ちを伝えてくれる音の粒。
技術は月森君からすれば、

「最低だ」

と冷たくあしらわれるのだろうけれど。
そういうことじゃない。
プロの世界はそう言うことなのかもしれないけれど。
違う、彼女は音を楽しんでいる。
まさに奏でるは「音楽」。
その紡がれる弦で体現されるは「音楽」なのだ。

壁に当たったあの日に聞いた彼女の音は今でも忘れられない。
耳の奥に残っている。
だから「知りたいと思った」。
彼女の全てを。
その指から、心から表現される世界を。
ふと、頬を赤く染めて僕と距離をとっている冬海さんが目に入る。
彼女も、そうだ。
彼女も「日野さんの音楽に魅せられた人」だ。

日野さん、冬海さん、天羽さん。
この三人で会話している時の彼女の表情は、時々校内で見かける表情とは明らかに違う。
校内でも楽しそうだが、やはり何か引いている感じだ。
だけれど、三人の時は、「相手に対して必死に答えようとしている」そんな姿勢を感じる。
彼女もきっと、好きなのだ、日野さんの事が。

「冬海さんって、日野さんの事、好きなんだよね?」

つい、ぽろりと言葉が出てしまった。
その言葉に敏感に彼女は反応して、更に顔を紅潮させた。
視線を地面に落とし、必死に何かから逃げようと、抵抗しようとしている。

「日野さんの音楽は素敵だよね。世界と言うか自然と言うか。愛情があって、僕は好きだな。
 公園で一寸聞いただけだったのに、本当に心に染込んで忘れられなくて…。
 冬海さんって、日野さんの事好きだよね?ね?
 彼女の音楽を好きだってことは、日野さんが好きだってことだよ。
 凄く真っ直ぐな、恋愛的な意味で」

別に虐めているわけじゃないが、どうしても「同意が欲しい」と何故か思ってしまった。
何でだろう。
別に彼女の意見なんて関係ないのに。
ただ、「日野さんを好き」と言う事を、僕自身が「僕自身に対して」確信を持ちたかった。
それだけだったのかもしれない。
誰かの「好き」を聞いて、僕も好きだと、そういった呪文を自分に掛けたかった。
それだけなのかもしれない。

必死に言葉を紡ごうとしているのか、良く見ると、スカートをぎゅっと握っている。
顔染めていた紅が、手まで広がっている。
そして、紡がれた言葉。

「先輩は、素敵な、方です!」

その音に少し吃驚してしまい、一歩下がってしまう。
普段の声が小さいからか、余計に「大きな声」に聴こえた。
彼女の精一杯の愛情の篭った、日野さんへの思い。
なんだか、胸の中が少しだけ、軽くなった気がした。

(僕はやっぱり、日野さんが好きなんだ…。とても、とても好きなんだ。)

「やっぱり、冬海さんも、日野さんが好きなんだね」
「そ、そんな、こと、…ありません」
「ううん、絶対好きなんだよ。凄く好きで、ずっと傍にいたい」
「そ、そんな、こと、ありませんっ」
「あるよ、絶対!」

何故ここで押し問答をしてるんだろうか、僕は。
疑問が少し浮かぶ。
だが、止められなかった。
想いが強く先へ先へ歩んでいく。

「一寸加地!何してんの!」

天羽さんが、冬海さんをなだめながら僕を怒鳴る。
作品名:Da CapoⅢ 作家名:くぼくろ