Da CapoⅢ
「え、い、いや、俺は悪くない!悪くないぞ!」
必死に否定をする。
悪くない、は本当だ。
僕は何も悪い事はしてない。
「あんた、一寸性格悪いわね!」
「わ、悪くない悪くないっ。勝手に冬海さんが泣き出したんだって!」
「勝手に、ってそんな訳ないでしょ!」
「本当だって、そうだって!」
結局、その後冬海さんは僕を一度も僕を見ず。
天羽さんからは呆れた視線を送られ続け。
いたたまれなくなってお別れの挨拶をして別れた。
帰り道、心は寂しかった。
まさに寒風吹きすさぶ、だ。
だけれど、何故か。
少しだけ満足していた。
「何かを渡すチャンス」や糸口は見つけられなかったが。
それでも、「日野さんを好きだ」と言う思いに、自分の思いに嘘がない事を知った。
今更だけれど、別に自分を疑っていたわけじゃないけれど。
でも、やはりどこかで「音楽」なのか「彼女自身」なのか。
分からなかった。
音楽は彼女であり、彼女は音楽なのだ。
(僕は、君の事が好きだよ)
空に星が瞬き始める。
冬に染まった夜空に、僕は日野さんに宛てて。
まだ伝えられない言葉を投げた。