こんな自分知らなかった
余計なお世話だということは、自分が相手にしてあげられることなんて何一つ無いんだということは、最初から分かっていた。嫌になるくらい、分かっていた。
「本当に欲しいもんなら自分で手に入れねーと意味がねぇだろ」
「まあ、ね……」
「だから、あー……」
ガシガシの傷んだ髪を乱し、意を決したように静雄が此方に近付く。
「お前は、いつも通りにしてろ。馬鹿みたいに阿呆みたいなちょっかい掛けて来い。俺が潰す。そーしねぇと何か、駄目な気がする」
調子が狂うんだよ、続けられた言葉に、臨也は思わず笑ってしまった。
「ほんっと馬鹿だね! シズちゃんは!!」
相手の言葉一つで簡単に傷付いて、癒されて、本当に馬鹿なのは自分の方。
けれど、相手の日常に自分の席があるのなら、今の関係だって万歳悪いものではないのかも知れない――なんて、思ってしまった。
作品名:こんな自分知らなかった 作家名:yupo