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涼風 あおい
涼風 あおい
novelistID. 18630
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『AngelVeats!!』 序章

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 それから料理を待っている間、食べている間、俺達は高校時代の思い出話に花を咲かせた。そうなると必然的に卒業後どうしていたかという話になり、俺はようやく気になっていたことを尋ねることができた。
「なぁ…日向はいつからこの仕事してるんだ?」
「んー…本格的にやり始めたのは高校卒業後だな」
 本格的に、ということは、高校時代から多少なりともやっていたということか…。
「高校の時、ゆりっぺに声かけられてさ、ちょっとバイトしたんだよ」
 ゆりの奴…なにやってんだよ…。
「……これ、ゆりには喋ったってこと内緒にしておいて欲しいんだけど、」
 それから日向の口から出た話は、俺の知らないゆりの話だった。
 俺達が高校2年の夏、ゆりの親父さんが病気で倒れて、一時は重体だったそうだ。そんなこと俺―いや、皆には微塵も感じさせていなかった。その時ゆりはなんとか父親の会社を残したくて、高校卒業後継ぐことを決意。そして日向に協力を頼んだという経緯らしい。
「あのゆりっぺの頼みだぜ?」
 普段なら大抵のことを一人で背負って一人でやりきってしまう。他人に協力を仰ぐときでも頼みごとというより命令に近い。そんなゆりがきっとその時は弱気になっていたんだろうと日向は言う。その弱っているゆりを、優しい日向は放っておくことができなかったんだろう。そしてゆりも日向なら頼れると思ったのか―。
 2人の信頼関係に嫉妬してしまうなんて、俺もどうかしてるな。
 もやもやした気持ちを抱いたまま、明日に備えてその日は早々に解散となった。
「あ、今夜は抜くのやめとけよー明日たっぷり抜いてやっからさ!じゃ、明日はよろしくな!」
 冗談交じりの日向の言葉に苦笑で返す。
「ああ、こちらこそよろしくな。おやすみ」
 立ち去る日向の背中を見えなくなるまで見送って、俺も自宅へと歩き始めた。

 明日俺は元同級生とセックスをする。
 それは到底正気の沙汰じゃない。ましてや相手は同性だ。普通の奴ならできるわけがないことだろう。
 まさか相手が元同級生だとは思っていなかったので、大層驚いたが、今くすぶっているこの感情は、不安なんてほんの2割くらいしかなかった。